エヌビディア失速、マグニフィセントセブンにも期待できず、ナスダック100は調整相場の再来を警戒
2024年5〜7月期決算で投資家の期待に応えることができなかったエヌビディア(NVDA)が失速している。8月5日に米国株が底打ちして以降、ナスダック100はエヌビディアなど主力半導体株の買いを受け、14%上昇する局面が見られた。しかし、エヌビディアが下落相場へ転じる場合は、ナスダック100でも調整相場の再来を警戒したい。
記事のポイント
・エヌビディアの株価が下落し、50日線を下方ブレイクした
・長期金利の低下でも、マグニフィセントセブンの上昇が限定的
・ナスダック100は、調整相場の再来を警戒する局面にある
・目先の見通しと注目のチャート水準について
エヌビディアの失速
米大手半導体エヌビディア(NVDA)が失速している。28日の2024年5〜7月期(第2四半期)決算は、売上高が前年同期比で約2.2倍の300億4000万ドル、純利益が2.7倍の165億9900万ドルだった。ともにコンセンサス予想を上回った。一方、第3四半期(3Q)の売上高見通しは325億ドル(プラスマイナス2%)と、こちらもコンセンサス平均の317億7000万ドルを上回った。
好決算にも関わらず、エヌビディアの株価は下落した。その要因は、2つあると思われる。ひとつは3Q売上高の見通しである。確かにコンセンサス平均は上回った。しかし、予想レンジは最大で379億だった。投資家の求めるハードルが高い上に、プラスマイナス2%前後という曖昧さも、投資家の失望を誘った可能性があろう。
もうひとつの要因が、次世代GPU「Blackwell」の設計と生産の問題に直面していることである。エヌビディアはこれらの点について認めている。しかし、最高経営責任者(CEO)のジェンスン・フアン氏と最高財務責任者(CFO)のコレット・クレス氏は、投資家とのカンファレンスコールで第4四半期に数十億ドルの売上高を達成すると述べるにとどまり、Blackwellの詳細な展望についての説明は避けた。この点も投資家の失望につながった可能性がある。
エヌビディアの株価はフィボナッチ・エクステンション61.8%の水準130.96レベル(131ドル)で上昇が止められ、下落ムードが高まっていた。そして昨日は、決算を受けた失望売りで50日線を完全に下方ブレイクした。
日足のRSIはデッドクロスへ転じている。MACDでもデッドクロスのムードが漂っている。21日線の下方ブレイクは、エヌビディアの株安がさらに進行するサインになり得る。
エヌビディア:日足 今年4月以降
出所:TradingView
エヌビディア頼みの状況
なぜ、エヌビディア(NVDA)の動向がそれほど重要なのか?この点について、27日(エヌビディアの決算が発表される前)までのS&P500(SPX)セクター別パフォーマンスで確認すると、半導体株が属する情報技術セクターが最も上昇し、株高をけん引してきたことが分かる。
S&P500セクター別パフォーマンス:8月6日~27日
ブルームバーグのデータで筆者が作成
情報技術セクターのパフォーマンスは、主力の半導体株の動きに左右される。
その半導体株のパフォーマンスを確認すると、エヌビディアの上昇率が突出していることが分かる。つまり、今月6日以降のナスダック100(NDX)の急反発は情報技術セクターの買いにけん引され、その情報技術セクターはエヌビディアの猛烈な買戻しに支えられていたことが分かる。ゆえに、エヌビディアの失速は株高のけん引役を失うことを意味する。
アメリカの主力半導体株のパフォーマンス:8月6日~27日
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / SMCI:スーパー・マイクロ・コンピューター
マグニフィセント7ではなく“1”の状況に
“エヌビディア頼み”の状況は、マグニフィセントセブンのパフォーマンスでも鮮明となっている。
同じく8月6日から27日(エヌビディア決算の発表前)までのパフォーマンスを確認すると、「エヌビディア1強」の状況にあったことが分かる。他の6銘柄は団子状態であり、しかも先週の後半からパフォーマンスが低下基調へ転じている。
アメリカの10年債利回り(長期金利)は、一時3.8%を割り込む局面が見られた。それでもエヌビディア(NVDA)を除くマグニフィセントセブンの上昇は限定的だった。
この状況でエヌビディアの株価が21日線を下方ブレイクし下落幅が拡大すれば、その影響は半導体セクターとマグニフィセントセブン全体に波及しよう。エヌビディアのさらなる失速をきっかけに主力株が総崩れとなれば、ナスダック100(NDX)は調整相場の再来を警戒する必要がある。
マグニフィセントセブンのパフォーマンス:8月6日~27日
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ナスダック100、注目のチャート水準
上値の水準(レジスタンス)
・19,922:エクステンション76.4%
・19,818:8/23高値
・19,620:レジスタンス
・19,476:50日線(8/29)
下値の水準(サポート)
・19,046:21日線(8/29)
・19,009:リトレースメント76.4%
・18,986:リトレースメント38.2%
ナスダック100、目先の見通し
不安心理は高まっていないが
ナスダック100(NDX)のプットコールレシオは現在、1.1前後で推移している。今夏の株安局面で1.5まで上昇したことを考えるならば、投資家の不安心理は高まっていない。しかし、現時点での今年の平均1.01は上回っている。
また、ナスダック100のボラティリティ指数「VXN」は20ポイント前後で推移している。来週に発表される8月ISM製造業・非製造業の景況指数や同月の雇用統計が景気懸念を想起させる場合は、投資家の不安心理が高まる展開が予想される。
ナスダック100のプットコールレシオ:日足 今年6月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
焦点は19,000の維持
エヌビディア(NVDA)と同じくナスダック100(NDX)も50日線をあっさりと下方ブレイクする状況にある。
日足のMACDではデッドクロスが確認されていないが、RSIではその状況にある。そしてモメンタムは、ゼロラインを下回ってきた。テクニカルの面では、ナスダック100の下落を警戒する局面にある。
目先の焦点は、19,046レベルで推移している21日線の攻防となろう(下の日足チャート、緑ラインを参照)。この移動平均線をトライする場合は、19,000ポイントの維持を見極めることが焦点となろう。この水準を挟んで、2つのフィボナッチ・リトレースメントが展開している。ひとつは、76.4%水準19,009である。もうひとつは38.2%水準の18,986ポイントである(下の1時間足チャートを参照)。テクニカルの面でも19,000ポイントは、反発か?さらなる下落か?を判断する重要な分岐点となろう。
ナスダック100が21日線をトライするサインとして、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準19,186レベルの攻防に注目したい。昨日はこのテクニカルラインの上で相場が反発した(下の1時間足チャートを参照)。
1時間足のストキャスティクスとRSIで相場のモメンタムを追い、これらオシレーター指標が売られ過ぎの水準でゴールデンクロスへ転じる場合は、ナスダック100の反発を想定しておきたい。特に、上で取り上げたサポート水準をトライする局面では、その可能性を強く意識したい。
反発局面では50日線の突破が焦点に
一方、上で取り上げた来週の経済指標でアメリカ経済の堅調さを示す内容が続けば、エヌビディア(NVDA)失速の影響を相殺しよう。景気敏感株である半導体株のサポート要因となるならだ。このケースでは、ナスダック100(NDX)の上値トライを想定しておきたい。
ナスダック100の上昇局面では、50日線(29日時点で19,476レベル)の突破とサポート転換の確認を確認したい(下の日足チャート、青ラインを参照)。
ナスダック100が50日線以上の攻防となる場合、次に注目したいレジスタンスの水準が19,620レベルである。27日は19,617レベル、昨日は19,622レベルでそれぞれ上昇が止めれた。
19,620レベルを完全に上方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準19,922を視野に上昇幅の拡大を予想する。23日の高値19,818ポイントの突破は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準19,922をトライするシグナルと想定しておきたい。
ナスダック100:日足 今年7月以降
出所:TradingView
ナスダック100:1時間足 8月以降
出所:TradingView
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