【米国株】エヌビディアに対中輸出規制、反発ムードに冷や水、ナスダック100の見通し
米国株の混乱は一服ムードにある。しかし、下落リスクが後退したわけではない。エヌビディアの対中輸出規制は、ナスダック100の反発ムードに冷や水を浴びせた。米国市場でのさらなる下落を警戒したい。

記事のサマリー
米国株の混乱はひとまず一服している。しかし、15日の株式市場での上値の重さを考えるならば、下落リスクを警戒する状況が続こう。エヌビディアは15日、中国向けに設計されたAI半導体「H20」が米政府による輸出規制の対象になったと発表した。同社の株価は時間外で6%余り下落した。米政府の輸出規制は半導体セクターの重石となる可能性がある。半導体株が下落すれば、ナスダック100の急反落を警戒したい。今日の見通しと注目のテクニカルラインについて。
目次
米国株の混乱は一服ムード、しかし下落リスク消えず
米国株の混乱ムードが一服している。S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティを基にシカゴ・オプション取引所(CBOE)が算出・公表しているVIXは今月7日、60ポイントまで急上昇する局面が見られた。しかし現在は、30ポイント付近へ急低下している。米10年債利回り(長期金利)の上昇が一服している状況(4.58%から4.32%へ低下している状況)も米国株の混乱が一服する要因となっている。
しかし、米国株が底打ちしたと判断するのはまだ早い。低下しているとはいえ、VIX指数は20ポイント以上の水準で推移している。新たなネガティブなイベントがあればVIX指数は再び上昇しよう。米国株の反発局面では下落リスクを常に警戒したい。
VIX指数:日足 年初来

出所:TradingView
エヌビディアの対中輸出規制、米国株の反発ムードに冷や水
その新たなネガティブイベントになり得るのが、トランプ米政権による半導体の輸出規制である。半導体大手のエヌビディア(NVDA)は15日、中国向けに設計された人工知能(AI)半導体「H20」について、今後は対中輸出の許可が必要になる通達を米政府から受けたと発表した。H20製品の在庫や購買契約への影響を考慮し、第1四半期(2-4月)に約55億ドルの費用を計上するという。輸出規制の発表を受け、同社の株価は時間外の市場で6%余り下落した。
エヌビディアの株価下落に連動し、ナスダック100先物の下落幅も拡大している。レポート掲載時点で200ポイントを超す下落となっている。
米国テク株100(ナスダック100のCFD)は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準19,030レベルで反落し(4時間足チャート、赤ゾーンを参照)、短期レジスタンスラインの突破に失敗した。レポート掲載時点では、今月7日以降の高安のフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準をトライする局面が見られた。エヌビディアの対中輸出規制はナスダック100の反発ムードに冷や水を浴びせた。
米国テク株100:4時間足 3月下旬以降

今日の注目指標は米小売売上高、予想外の下振れを警戒
本日、米国株の下落要因として注目すべき材料がもう一つある。それが、3月の米小売売上高である。
ブルームバーグがまとめた市場予想によれば前月比で1.4%増と、個人消費の堅調な伸びが見込まれている。自動車を除く小売売上高も同比0.4%増と、2月の0.3%から伸びる見通しにある。国内総生産(GDP)の算出に使われるコア指数(コントロール・グループ)は同比0.6%増と、2月の1.0%増から縮小することが見込まれている。だが、1月の縮小から2か月連続で拡大することが予想されている。
3月の見通しが強気であるがゆえに、警戒すべきは予想外に下振れるケースとなろう。4月のミシガン大学消費者態度指数(速報値)は50.8と、3月の確報値57.0からさらに低下し2022年6月以来(50.0)の低水準に落ち込んだ。一方、1年先の期待インフレ率は6.7%と、1981年11月以来の高い水準(7.3%)へ上昇した。アメリカの消費者はインフレの再燃を警戒すると同時に、今後支出を抑制する可能性が示された。3月の小売売上高で個人消費が予想外の縮小(支出の抑制)を示す内容となれば、景気の減速懸念が米国株の反発ムードに冷や水を浴びせる展開を警戒したい。
米国 小売売上高:直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成
ナスダック100、今日の見通しとテクニカルライン
目先の上限は19,000、リトレースメントの攻防に注目
上で述べたとおり、IG証券の米国テク株100(ナスダック100CFD、以下ではナスダック100)は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準19,030レベルで反落し、短期レジスタンスラインの突破に失敗した(上の4時間足チャートを参照)。日足チャートでは、20日線(15日時点で19,058ポイント)がレジスタンスラインとして意識されていることが分かる(下の日足チャート、緑矢印を参照)。いずれも19,000ポイント台の水準にあることを考えるならば、ナスダック100の反発局面では、19,000レベルを目先のレジスタンスラインと想定したい。
19,000のラインをトライするサインとして、今日は15分足のフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。38.2%戻しの18,695ポイント、半値戻しの18,754ポイント、61.8%戻しの18,814ポイントの各水準はレジスタンスラインへ転換する可能性がある。
3月の小売売上高で個人消費の拡大が示される場合は、一時的な米国株の買い戻し要因になり得る。だが、日足の一目均衡表は三役逆転の状況にある。MACDはゴールデンクロスへ転じているがゼロラインを下回っている(日足チャート、黒矢印を参照)。DMIとADXのトレンドも考えるならば、ナスダック100の地合いは弱い。本日、19,000ポイントを突破する可能性は低いと予想する。反発の局面では、30分足にまとめたフィボナッチ・リトレースメントでの急反落を警戒したい。
レジスタンスライン
・19,000:76.4%戻し(4時間足)、20日線(日足)
・18,888:76.4%戻し(30分足)
・18,814:61.8%戻し(30分足)
・18,754:半値戻し(30分足)
・18,695:38.2%戻し(30分足)
・18,621:23.6%戻し(30分足)
18,500と18,400の攻防
一方、ナスダック100が下値をトライする場合は、16日の東京市場に付けた安値18,500ポイントの攻防に注目したい(30分足チャート)。このラインを下方ブレイクする場合は、日足の一目基準線のトライを想定したい。このラインは今日現在18,400ポイント付近で推移している。
ナスダック100が18,400ポイントをも下方ブレイクする場合は、30分足チャートのフィボナッチ・リトレースメント76.4%戻しの水準18,368ポイントまでの下落を想定したい。
サポートライン
・18,500:東京時間の安値(30分足)
・18,400:一目基準線(日足)
・18,368:76.4%戻し(30分足)
米国テク株100のチャート
30分足:4月11日以降

出所:TradingView
ナスダック100のチャート
日足 2月以降

出所:TradingView
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