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軟調地合いの米半導体株、ナスダック100は米議会選挙とFOMCにらみ、再び上昇ムード高まるか

最高値を目前に上値の重い展開が続くナスダック100。今週は、アメリカ大統領選挙と同時に行われる連邦議会選挙の結果とFOMCで上下に大きく振れる可能性がある。まずは、米選挙直後の株価動向に注目したい。FOMCで連続利下げの期待が高まる場合は、ナスダック100の下支え要因となろう。今週注目のチャート水準は?

Source: Bloomberg Source: Bloomberg

記事のポイント

・軟調な半導体株がナスダック100の上昇を抑制している
・アメリカ議会の「ねじれ」はナスダック100の押し上げ要因に
・FOMCで連続利下げの期待が高まれば、ナスダック100を下支えしよう
・ナスダック100、今週注目しておきたいテクニカルラインについて


ナスダック100のチャートポイント

レジスタンスポイント

・20,691:7月10日取引時間の最高値
・20,600:10月29日高値
・20,500:レジスタンスポイント
・20,216:21日線(11/4時点)

サポートポイント

・19,800:50日線(11/4時点)
・19,600:サポート転換の水準
・19,240-400:38.2%戻し、61.8%戻しのサポートゾーン
・19,000レベル:半値戻し、76.4%戻しのサポートゾーン


ナスダック100、最高値を前に上値の重い状況が続く

先週1日にアメリカの労働省が10月の雇用統計を発表した。それによれば、非農業部門雇用者数が前月比1万2,000人増と、ブルームバーグがまとめた市場予想の10万人を大きく下回った。

大きく雇用が減少した要因が航空機大手ボーイングのストライキや大型ハリケーン「ミルトン」の被害などにあるとの見方から、この日のアメリカ株式市場ではヒステリックな反応は見られなかった。

しかし、週間の騰落率を確認すると、先週はラッセル2000以外の主要なアメリカ株価指数が下落して終えた。最も下落したのが、ハイテク株比率の高いナスダック100だった。

アメリカ株価指数の週間騰落率:10月28日~11月1日の週

アメリカ株価指数の週間騰落率:10月28日~11月1日の週

ブルームバーグのデータで筆者が作成

軟調地合いが続くアメリカの半導体株

米半導体株の軟調地合いが、ナスダック100の上値の重さの原因となっている。

10月19日にアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が2024年7〜9月期決算を発表した。第4四半期のガイダンスで、売上高の見通しが予想の範囲内にとどまり投資家の期待を超えることができなかったことで、「AI需要の拡大→米半導体企業の成長ペースが加速する」という投資家の期待が後退した。同社の株価は先週9%安となった

マイクロン・テクノロジー(MU)とマグニフィセントセブンのリーダー銘柄であるエヌビディア(NVDA)もAMDの下落に追随した。

米国の半導体株と株価指数の騰落率:10月28日~11月1日の週

米国の半導体株と株価指数の騰落率:10月28日~11月1日の週

ブルームバーグのデータで筆者が作成

米半導体株の地合いの弱さを示唆するかのように、先週フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は4%下落した(上のチャートを参照)。日足チャートでSOX指数の動向を確認すると、50日線で見事に上値が止められている(下のチャート、青矢印を参照)。トライアングルの下限(サポートライン)を視野に下落ムードにある状況も考えるならば、米半導体株が上昇トレンドの回帰に苦労していることが分かる。この状況が続く限りナスダック100が上昇しても、その幅が限られる状況が続くだろう。

フィラデルフィア半導体株指数のチャート:日足 2024年6月以降

フィラデルフィア半導体株指数のチャート:日足 2024年6月以降

出所:TradingView

米議会の「ねじれ」がナスダック100にとって最良の結果か

いよいよアメリカ大統領選挙の投票日を迎えた。5日のIG米国株レポート「米国株、大統領選挙と議会選挙の両にらみ、注目は選挙直後の株価動向、ダウ平均の見通し」で述べたとおり、アメリカ大統領選の年は米国株が上昇する傾向にある。アメリカ経済のソフトランディング期待が高まっている状況も考えるならば、今回の大統領選挙でも「株高のアノマリー」が再現される可能性がある。選挙直後、米国株が「株高のスタートダッシュ」に成功すれば、年末高の可能性が高まろう。しかし選挙の結果によって、今年末までの株価指数に与えるインパクトは異なることが予想される。

ナスダック100にとって最良の選挙結果は、「ねじれ議会」にあると筆者は考えている。そう考える理由は2つある。ひとつは、これ以上の米長期金利の上昇を抑制する効果が期待できることにある。大統領選でトランプ候補が勝利し、かつ上下両院を共和党が制する「トリプルレッド」となれば、米長期金利にはさらに上昇の圧力がかかることが予想される。今はAI産業の成長に対する過度の期待が後退している。この状況で米長期金利がさらに上昇すれば、バリュー株が選好される展開が予想される。一方、ハイテク株比率の高いナスダック100にとって長期金利のさらなる上昇は重石となろう。

しかし、大統領選挙でトランプ候補が勝利してもアメリカ議会が「ねじれ」の状況に陥れば、トランプ陣営が掲げる政策がすべて議会を通る可能性は著しく低下する。この点に対する市場の思惑は、短期的に米長期金利の上昇を抑制する要因になり得る(中長期ではインフレ次第で長期金利が再び上昇する可能性がある)。

また、大統領選挙で民主党のハリス候補が勝利しても、アメリカ議会が「ねじれ」の状況となれば、ハリス陣営が掲げる法人税率の引き上げ(21%から28%に引き上げる増税案)成立の壁となるだろう。

アメリカの株式市場で、法案や政策の議会審議が材料視されるのは来年以降となろう。だが、今年末までの株価動向を考えるならば、「ねじれ議会」が次のアメリカ大統領の「暴走」を防ぐ役割を果たすという期待が高まることが予想される。特にこの期待が米長期金利の上昇を抑制すれば、ナスダック100の下支え要因となることが予想される。

米連邦公開市場委員会(FOMC)、パウエル会見に注目

今週6日から7日にかけて米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。今回の会合では、0.25%の利下げが確実視されている。ゆえに焦点は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースとなろう。この点のヒントを得ようと、市場参加者はパウエルFRB議長の会見に注目するだろう。

筆者は、雇用を含めた景気の先行きについて言及する場合、パウエルFRB議長がどのような見通しを示すのか?この点に注目している。パウエルFRB議長が景気の先行きリスクに対応する必要性に言及すれば、アメリカの株式市場では12月以降のFOMCでも連続利下げのペースを維持するとの期待がさらに高まるだろう。連続利下げの期待は、長期金利上昇の抑制要因となろう。FOMCで米金利が低下する場合は、ナスダック100の下支え要因となり得る。

パウエルFRB議長が景気リスクに言及する場合は、株安の要因にもなり得る。だが、強い経済指標が確認される間は、今夏のようなリスク回避相場が発生する可能性は低いだろう。仮に株安となっても連続利下げの方が強く意識されることで、短期で終息することが予想される。

なお、短期金融市場は12月のFOMCで追加利下げを60%台程度織り込んでいる。パウエル会見次第では、この確率が大きく変わることが予想される。

米政策金利の予想推移

米政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 5日12時時点の予想推移


ナスダック100の見通しとテクニカル分析

ナスダック100のレジスタンスポイント

アメリカ大統領選の後、米国株が「株高のスタートダッシュ」に成功すれば、ナスダック100の上値トライを想定しておきたい。

目先の焦点は、10月31日以降レジスタンスのラインとして意識されている21日線の突破となろう。ナスダック100がこの移動平均線を完全に突破すれば、レジスタンスとして相場の上昇を止め続けた20,500と20,600を視野に上昇幅の拡大を想定しておきたい(下の日足チャート、赤矢印を参照)。

大統領選だけでなく11月のFOMCも米株高の要因となれば、ナスダック100は上で述べた2つのレジスタンスポイントを突破する可能性が高まろう。後者の20,600ポイントを完全に上方ブレイクすれば、7月の最高値20,691ポイントが視野に入ろう。

ナスダック100のチャート:日足 2024年7月以降

ナスダック100のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView

ナスダック100のサポートポイント

日足のMACDはデッドクロスへ転じている(上の日足チャート、赤矢印を参照)。RSIも同じ状況にあり、売られ過ぎの水準には到達していない(上の日足チャート、紫の矢印を参照)。この状況でアメリカ大統領選挙の結果がナスダック100の上値を抑制する要因となれば、50日線のトライと下方ブレイクを想定しておきたい。

ナスダック100が50日線をブレイクアウトすれば、地合いの弱さを市場参加者に印象付けよう。このケースでは、サポート転換が確認された19,600ポイントンの攻防が焦点に浮上しよう。

ナスダック100が19,600ポイントをも下方ブレイクする場合は、半値戻しとフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準が重なる19,000ポイントの維持が焦点に浮上しよう。

フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準と61.8%水準で形成されるサポートゾーン19,240~19,400の下方ブレイクは、19,000ポイントをトライするサインと捉えたい。

ナスダック100のチャート:1時間足 8月以降

ナスダック100のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView


再掲 ナスダック100のチャートポイント

レジスタンスポイント

・20,691:7月10日取引時間の最高値
・20,600:10月29日高値
・20,500:レジスタンスポイント
・20,216:21日線(11/4時点)

サポートポイント

・19,800:50日線(11/4時点)
・19,600:サポート転換の水準
・19,240-400:38.2%戻し、61.8%戻しのサポートゾーン
・19,000レベル:半値戻し、76.4%戻しのサポートゾーン



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