【IG米国株レポート】S&P500指数、目先の見通しとチャートポイント
米財務省の四半期定例入札で国債発行の増加ペースが予想を下回った。さえない経済指標も材料視され、1日の米債市場では長期ゾーン利回りが低下した。短期的に米国株は反発相場を意識する局面にある。しかし、今後発表される重要経済指標(雇用統計など)が強い内容となる場合は反落を警戒する必要があろう。目先のS&P500指数で注目しておきたいチャートポイントは?詳細はIG米国株レポートをご覧ください。
サマリー
・米長期ゾーン利回りの上昇がひとまず一服している
・米国株と米国債のボラティリティ指数も低下基調へ転じている
・S&P500指数は短期的な反発相場を意識する局面にある
・しかし、明日の雇用統計などの重要な経済指標次第では反落リスクを警戒したい
長期ゾーン利回りの上昇が一服
米財務省は四半期定例入札で、来週の発行額(3年債、10年債、30年債)を計1,120億ドルと発表した。前四半期に比べて規模は拡大したが、主要ディーラーの予想1,140億ドルを下回った。
同日に発表された10月のADP雇用統計と同月のISM製造業景気指数が市場予想を下回ったこともあり、この日の米債市場では長期ゾーン利回りが低下した。
米長期ゾーン利回りのチャート:5分足 11月以降
2つのボラティリティ指数が示唆すること
米長期ゾーン利回りの低下を受け、投資家の心理を反映する2つのボラティリティ指数も低下のムードにある。
ひとつは、S&P500指数(SPX)のオプション価格から算出されるVIX指数(VIX)である。
先月23日にVIX指数は一時23ポイント台と、今年3月に米国のシリコンバレー銀行とシグネチャー銀行の破綻が相次いだ時の水準まで上昇した。しかし、現在は16ポイント台まで低下している。
もうひとつの注目すべきボラティリティ指数が、米国債の先行きの変動リスクを示すMOVE指数である。
この指数は、米国債価格の急激な上昇や下落に反応する特性がある。上で述べた地銀の破綻が発生した時は、リスク回避で米国債の価格が上昇したことでMOVE指数も上昇した(下チャートの右グレーゾーンを参照)。
一方、今年9月下旬以降のMOVE指数の上昇は、金利の上昇に伴う米国債価格の下落が要因である。
いずれにせよ、これらボラティリティ指数は現在、低下基調へ転じつつある(下チャートの左グレーゾーンを参照)。
これらの動向は、米国株が”短期的”な反発相場へ転じる可能性を示唆している。
ボラティリティ指数(米国株/米国債)のチャート:日足 年初来
S&P500指数、目先の見通しとチャートポイント
上昇の局面では3つの移動平均線の攻防が焦点に
テクニカルの面で現在、面白い局面にあるのがS&P500指数(SPX)である。
日足チャートで直近の動向を確認すると、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準4,113レベルで見事に反発している(下チャートを参照)。
日足のMACDはゼロライン以下の水準で推移しているが、ゴールデンクロスが示現するムードにある(下チャートを参照)。
これらの動きは、米長期ゾーン利回りの低下の影響の大きさを物語っている。
今日以降もS&P500指数が反発基調を維持する場合は、200日線の突破が焦点となろう。この移動平均線は4,243レベルで推移している。
200日線の突破に成功する場合、次の焦点は21日線の攻防となろう。この移動平均線は4,268レベルで推移している。21日線の上方ブレイクは、さらなる上値トライのシグナルと想定しておきたい。
S&P500指数が21日線以上の攻防となる場合は、50日線のトライを想定しておきたい。この移動平均線は4,350レベルで推移している。10月17日に相場の上昇を止めた経緯を考えるならば、この移動平均線での反落を警戒したい。
S&P500指数のチャート:日足 23年3月以降
反落局面での焦点は?
明日は、10月の雇用統計が発表される。市場予想は以下のとおりである(赤のバーチャートとドットを参照)。
雇用統計で労働市場の底堅さが意識される場合は、米長期ゾーン利回りの反発要因となろう。
今のS&P500指数(SPX)の反発は、米長期ゾーン利回りの低下によるところが大きい。ゆえに、強い雇用統計はS&P500指数の反落要因として警戒しておきたい。
S&P500指数の反落局面で注目したいのが、上で述べたフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準4,113レベルの攻防である。反落の局面でこのテクニカルポイントの維持に成功する場合は、短期的な重要サポート水準として意識される可能性が高まろう。
逆にS&P500指数が61.8%の水準を難なく下方ブレイクする場合は、節目の4,000ポイントを視野に下落幅が拡大する可能性を意識したい。
テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準3,997レベルの攻防に注目したい(上の日足チャートを参照)。
米国の雇用統計 各項目の動向:月次 22年10月以降
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