【米国株 ウィークリーレポート】 ナスダック100指数のブレイクアウトに注目

※外為市場の見通しについてはこちらのレポートを参照
※次回の米国株ウィークリーレポートは4月10日に配信します

【サマリー】

・アメリカの債券市場は利上げサイクルの停止を意識する状況にある
・アメリカの株式市場は「ハイテク株買い / 銀行株売り」の展望となっている
・銀行株の影響を受けないナスダック100指数は2月高値のブレイクアウトが焦点に
・ナスダック100指数の見通しと注目のチャートポイントについて

利上げサイクルの終了を意識する米債市場

米連邦準備理事会（FRB）のパウエル議長は22日、連邦公開市場委員会（FOMC）後の記者会見でインフレ抑制重視のスタンスを改めて表明した。

しかし、パウエル会見を受け米債市場では金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りの低下幅。その後も低下基調が続き3.8％を割り込む展開となっている。一方、10年債利回り（長期金利）もこの動きに追随し低下基調にある。

アメリカ金利のチャート

一方、短期金融市場では、今年6月以降の利下げを織り込む状況が続いている。そしてFEDウォッチでは5月会合での利上げ確率が12％台まで低下している（27日12時時点）。これらの動きは、FRBによる利上げサイクルの終了が近いことを市場参加者が意識していることを示している。

5月FOMCの利上げ予想

ハイテク株買い、銀行株売り

一方、米国の株式市場には迷いが見られる。FOMC後に開かれたパウエルFRB議長の定例会見を受けて、米国の主要な株価指数は下落で反応した。しかし、FOMC全般を精査した23日の市場では、主要指数が反発して引けた。

23日の相場をサポートしたのは、グーグル(GOOGL)やマイクロソフト(MSFT)、エヌビディア（NVDA）などの大手ハイテク株と半導体株の買いだった。

ハイテク株と半導体株の上昇は10年債利回り（長期金利）の低下によるところが大きい。上で述べたとおり、現在の米債市場は利上げサイクルの終了を意識する状況にある。この点を考えるならば、今週もハイテク株や半導体株が米国株をサポートすることが予想される。

なお、今週28日に半導体大手のマイクロンテクノロジー（MU）が第2四半期の決算を発表する。売上高のアナリスト予想（コンセンサス平均）は$3.75B、一株利益（EPS）のそれは-$0.77となっている※。
※アナリスト予想：ブルームバーグより

日足チャートでマイクロンテクノロジーの株価トレンドを確認すると、2022年以降の下落トレンドを象徴するレジスタンスラインを突破している。決算を受けて “レジスタンス転換” が確認されている65.70レベルの突破に成功すれば、上昇ムードがさらに高まることが予想される。同社の株価動向は、他の半導体銘柄のトレンドを左右する可能性があるため注目しておきたい。

マイクロンテクノロジーのチャート

一方、銀行株は引き続き下落基調にある。KBW銀行株指数は3週連続でマイナスとなった。この状況は、今週も金融システム不安が米国株の重石となる可能性を示唆している。米金利の低下も利ザヤ収益の縮小懸念を高める要因となる。このため今週の米国株は、ハイテク株がサポート要因となっても銀行株の売りがその影響を相殺する展開を想定しておきたい。

KBW銀行株指数のチャート

注目の株価指数はナスダック100

13,000ポイント台への上昇が焦点に
「米金利の低下→大手ハイテク株と半導体株の上昇」を受け、ナスダック100指数（NDX）の上昇幅が拡大している。

直近のトレンドを日足チャートで確認すると、11,700レベルが “サポート転換” した後、50日MAや20日MAといった移動平均線だけでなく、短期レジスタンスラインをも難なく突破していることがわかる。

ナスダック100指数は、金融セクターを除く時価総額上位100銘柄で構成されている。ゆえに、銀行株が下落してもその影響を受けることがない。

現在のナスダック100指数は、2月2日の高値12,880レベルを試す状況にある。MACDも地合いの強さを示唆している。今週も米金利が低下基調を維持する場合は、大手ハイテク株と半導体株の上昇要因となろう。これらセクターの上昇が続けば、ナスダック100指数は12,880レベルを日足ローソク足の実体ベースで完全に突破することが予想される。

ナスダック100指数が12,880レベルをブレイクアウトした後に “サポート転換” が確認される場合は、13,000のトライおよび突破を想定しておきたい。

ナスダック100指数のチャート

騰落株線では地合いの強さが見られず
上の日足チャートを見ると、ナスダック100指数（NDX）は12,880レベルで2度上値が止められている。

さらに地合いの強さを示す騰落株線（ADライン）は横ばい推移となっている。テクニカルの面では地合いの強さを示唆する動きが続いているが、騰落株線の動きを考えるならばナスダック100指数は12,880レベル、または節目の13,000レベルで不意に反落する可能性もある。

そのきっかけとして今週注目しておきたいのが、下で述べるインフレ指標－2月個人消費支出（PCE）デフレーターである。FRBが最も注視する物価指標でインフレ圧力の根強さがあらためて確認される場合は、米金利の反発が予想される。米金利の上昇はハイテク株と半導体株の下落要因である。

ナスダック100指数の騰落株線

2月のインフレ指標

今週31日に2月のアメリカ個人消費支出（PCE）デフレーターが発表される。

1月のデータではインフレ圧力の根強さが確認された（前月比のチャートを参照）。2月のデータでもインフレ圧力の根強さが確認される場合は、米金利の反発要因となろう。上で述べたとおり米金利の反発は、ハイテク株と半導体株の下落要因である。ゆえに強いインフレ指標は、ナスダック100指数（NDX）の下落幅が拡大する要因となろう。

一方、2月PCEデフレーターが市場参加者のインフレ懸念を後退させる内容となれば、米金利は低下基調を維持しするだろう。このケースでのナスダック100指数は上で述べた節目の13,000台乗せ、および12,880レベルの “サポート転換” が予想される。

アメリカ個人消費支出（PCE）デフレーターの推移：前月比

アメリカ個人消費支出（PCE）デフレーターの推移：前年比