【IG米国株レポート】 アップルとアマゾンの決算、7月雇用統計そして強すぎる投資家のセンチメント
先週の米経済指標では、景気の底堅さとインフレが鈍化の傾向にあることが確認された。また、アルファベットやメタの好決算を受けて株高をけん引している主力株の調整ムードも後退している。今週の米国株は、調整相場を警戒しながらも上値トライを想定しておきたい。ひとつ注意しておくべきは、強気に傾き過ぎている投資家のセンチメントである。
サマリー
・主力株のパフォーマンスは二極化する状況に
・しかし経済指標やアルファベットとメタの決算を受け調整ムードが後退している
・今週の米国株は引き続きどの水準まで上値をトライするか?この点が焦点となろう
・投資家のセンチメントが強気に傾き過ぎている状況は不意の反落要因として警戒したい
上昇要因に囲まれる米国株
上昇要因1:主力株のパフォーマンス
先週はマイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)、メタ・プラットフォームズ(META)が四半期決算を相次いで発表した。結論から言えば、いずれの企業もアナリスト予想を上回った。
しかし、株価のパフォーマンスを週間騰落率で確認すると、マイクロソフトはクラウド事業の根幹である「アジュール」の売上高の伸びが前四半期の31%から27%へ鈍化したことが嫌気され下落した。
一方、アルファベットとメタ・プラットフォームズの株価は10%超上昇し、ナスダック100指数(NDX)をサポートした。
週間騰落率:マイクロソフト、アルファベット、メタ
23年前半の米株高をけん引してきた主力株全体の週間騰落率を確認すると、ナスダック100指数(NDX)のパフォーマンスを上回っているのが4銘柄、下回っているのが3銘柄と二極化していることが分かる。
しかし、週の後半に買戻しが入り、マイクロソフト(MSFT)以外はプラス圏を維持し、市場参加者に地合いの底堅さを印象付けた。
週間騰落率:ナスダック100指数と主力株
上昇要因2:想定どおりのFOMC
先週の連邦公開市場委員会(FOMC)で連邦準備制度理事会(FRB)は、大方の予想どおり0.25%の利上げを決定した。
そしてパウエルFRB議長の会見にもサプライズはなく、IG米国株レポートで指摘した「データ重視」の姿勢をあらためて強調した。
想定どおりのFOMCとなったことを受け、短期金融市場では米利上げサイクルの終了を織り込む状況にある。これは、米国株にとって支援要因である。
上昇要因3:景気の底堅さとインフレノ鈍化
また、経済指標も米国株のサポート要因となっている。
先週27日に発表された4-6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率で2.4%増と、1-3月期の同比2.0%から伸びが加速した。
アメリカGDPの約7割を占める個人消費は同比1.6%増と1-3月期の4.2%増から減速したが、飲食などのサービス消費はコロナ禍以前の水準に戻りつつある。
一方、コアPCE価格指数は1-3月期の4.9%から3.8%へ鈍化した。また、先週28日に発表された6月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)も前年同月比で4.1%と、5月の同比4.6%から低下した。
景気の底堅さが確認される一方で、インフレの鈍化傾向があらためて確認された状況は、米国株の支援要因となろう。
アメリカGDP統計の推移
今週の注目材料
注目材料1:アップルとアマゾンの決算
8月3日に、アップル(AAPL)とアマゾン(AMZN)が四半期決算を発表する。
アップルは、iPhoneをはじめとした各プロダクトの収益が落ち込むことが予想されており、アナリストは減収・減益を予想している。
一方、アマゾンは増収・増益の予想となっている。しかし、新たな収益の柱であるクラウド事業の「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の売上高の成長率は、前四半期の16%から9.5%へ落ち込む見通しとなっている。
だが、両社とも23年Q4は業績が回復する見通しとなっている。強気の見通し(ガイダンス)を示す場合、両社の株価は上昇基調を維持する可能性がある。
一方、決算で両社の株価が下落する場合は、米株高の調整要因になり得る。しかし、上で述べたとおり経済指標は、米国株にとって心地の良い環境(景気の底堅さとインフレが鈍化の傾向)にあることを示す内容が続いている。
マクロ面の状況を考えるならば、アップルとアマゾンの決算で米国株が下落しても、それは「調整の反落」と想定しておきたい。
各社の収益予想
注目材料2:アメリカの経済指標
今週は、アメリカの重要な経済指標が発表される。
市場参加者の関心が最も高いのが、来月4日に発表される7月の雇用統計である。
インフレの鈍化を受けて短期金融市場では、米利上げサイクルの終了を織り込む状況にある。しかし、9月以降の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げが完全に潰えたわけではない。
よって、7月の雇用統計で非農業部門雇用者数変化が予想以上に伸びると同時に賃金インフレの再加速が確認される場合は、連邦準備制度理事会(FRB)によるあと1回の追加利上げの可能性が高まることが予想される。
また、22年ぶりの高水準にまで引き上げられた政策金利(FFレート)の高止まりも意識されるだろう。強すぎる雇用統計は、米国株の下落要因になり得る。
だが、これから米国株の焦点は、インフレリスクから景気リスクにシフトしていくだろう。ゆえに強い雇用統計は短期的に米株安の要因となっても、中長期のスパンで考えるならば米国株の上昇要因である。よって、強い雇用統計で米国株が下落する場合は「調整の反落」と想定しておきたい。
一方、総じてさえない雇用統計となる場合は、利上げの停止と利下げの思惑を投資家に想起させるだろう。予想をはるかに超える雇用市場の落ち込みは将来の景気リスクを市場参加者に想起させる一方で、予想を若干下回る程度の内容ならば利上げサイクル停止の方が意識され、米株高の要因となる可能性がある。
アメリカ雇用統計の推移と7月の予想
強気に傾き過ぎている投資家のセンチメント
米国株は調整の反落を挟みながら、上値をトライする状況が続いている。しかしこういう局面では、不意に下落する状況を想定しておきたい。
現在、その要因(不意に反落する要因)として筆者が注目しているのが、強気に傾き過ぎている投資家のセンチメント(心理)である。
これを測る指標のひとつ「Fear&Greed指数」は、1ヶ月前から「Extreme Greed(超強気)」の状況にある。
投資家のセンチメントを表しているとされるVIX指数は現在13ポイント台と、「低すぎる水準」で推移し続けている。過去のトレンドパターンを振り返ると、VIX指数が10%台まで低下した後に反発する局面が見られる。
※VIX指数(IGの商品名:ボラティリティ指数)の詳細についてはこちらを参照
投資家のセンチメントが強気に傾き過ぎている状況では、株式市場にとって何等かのネガティブな要因が発生した時に投資家の不安心理が高まりやすい。
そしてVIX指数は、重要なネガティブイベントに反応しやすい特性がある。そのイベントとして今週は、上で述べたアップルやアマゾンの四半期決算と経済指標の内容に注目したい。
さえない四半期決算や“強すぎる”または“弱すぎる”経済指標が続く場合は、VIX指数のボラティリティが拡大する要因になり得る。
VIX指数のチャート
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。