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【アメリカ株】下げ一服も景気懸念が重石に、焦点は再び米経済指標へ S&P500の週間見通し

先週は米国株の下落が一服した。しかし景気懸念が重石となり、主要指数の上昇幅は限られた。経済指標次第では下落相場を警戒する状況が続こう。S&P500の週間見通しと注目のテクニカルライン。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

記事のサマリー

4週続落のS&P500とナスダック指数は先週、ようやく反発した。アメリカの株式市場には下落一服のムードが漂う。しかし、景気懸念は引き続き相場の重石となろう。この点を示唆しているのが、経済情勢を織り込んで動く米10年債利回りの動向と市場参加者が抱く米利下げペースである。中銀イベントを通過し、今週から米国株は再び経済指標にらみの展開となろう。S&P500の週間予想レンジは5,410~5,826ポイント。株高の局面では戻り売りを意識したい。

ようやく下げ止まったS&P500とナスダックだが

先週の米国株は反発して終えた。4週続落のナスダック指数とS&P500は小幅ながらも反発し、5週続落を避けることができた。ダウ平均は前週比1.2%の上昇で終えた。しかし200日線がレジスタンスラインとして意識され、上昇幅は限られた。S&P500とナスダック指数の上昇幅も限られたことを考えるならば、引き続き景気懸念が相場の重石となることが予想される。この点を示唆しているのが、以下で述べる米10年債利回り(長期金利)の動きと市場参加者が抱く米利下げペースである。

米株価指数の変動率:3月14~21日

米株価指数の変動率:3月14~21日

ブルームバーグのデータで筆者が作成


上昇が抑制される米金利、今年3回の利下げを意識する市場

米債市場では金利の上昇が抑制されている。経済情勢を織り込んで動く10年債利回りは現在、4.1~4.3%でレンジ相場の状況に陥っている。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は今月7日の講演やFOMC後の定例会見で、トランプ米政権が推し進める政策の不確実性を見極める必要性に言及しながらも、労働市場と経済が底堅さを維持していると述べた。そして現在は、トランプ関税によるインフレ再燃の可能性が意識されている。それでも10年債利回りは4.35%付近で上昇が抑制され、今年1月や2月の4.6%台、4.8%台から水準が切り下がっている。

今のレンジ相場は、インフレ再燃よりも将来の景気減速を米債市場の参加者が意識していることを示唆している。

米国10年債利回りの動向:4時間足 年初来

米国10年債利回りの動向:4時間足 年初来

出所:TradingView

一方、短期金融市場でも景気懸念を意識した動きが見られる。レポート掲載時点で今年末の政策金利の予想水準は3.6%前後まで低下し、3回の利下げを意識している。FOMC前は3.7%前後で推移していた。一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の予想は3.9%で今年2回の利下げを想定している。

短期金融市場の予想がFOMC前やFOMC参加者よりもハト派寄りへ傾いている状況は、パウエルFRBが景気を下支えする状況に追い込まれる可能性があることを示唆している。

利下げ期待の高まりは米国株の下支え要因である。しかしそれは、景気の底堅さが前提となる。経済指標でその前提が崩れる場合、今週も米国株の不安定な状況が続くことが予想される。注目の経済指標を以下にまとめた。

FOMC 政策金利の予想推移

FOMC 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想 / 24日 12時時点


再び経済指標にらみの展開に、今週の注目指標

先週はFOMCにらみの1週間だった。米国株のテーマが「景気」にある以上、今週以降は再び米経済指標にらみの展開となろう。

注目は、今日の3月の購買担当者景気指数(PMI)速報値、明日の同月消費者信頼感指数、そして28日に発表される2月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)と3月のミシガン大学消費者態度指数および期待インフレ率(確報値)となろう。

注目の米経済指標

注目の米経済指標

予想はブルームバーグ / 3月24日時点

週前半は、3月のPMI速報値と消費者信頼感指数が変動要因となろう。前者のPMIについてはこちらのIG為替レポートで指摘したとおり、製造業とサービス業はともに今年に入り低迷している。3月も予想外に下振れる場合は、「景気懸念→米株売り」を警戒したい。一方、予想以上に上昇する場合、米国株は反発基調を維持することが予想される。

明日の消費者信頼感指数は個人消費との相関性が高く、かつ景気の先行指標として注目されている。ブルームバーグの市場予想では2月から縮小する見込みである。ミシガン大学消費者態度指数に続き消費者マインドの低下が確認される場合は、スタグフレーションの懸念が米国株の重石となる展開を予想する。


S&P500の見通しとテクニカルライン

2つのレジスタンスラインと戻り売りを意識
上で取り上げた米経済指標で一時的にせよ景気懸念が後退する場合、S&P500は以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。週間予想レンジの上限は半値戻しの水準5,826ポイント(日足チャート参照)。この水準には日足の一目基準線が推移している。

予想レンジの上限をトライするサインとして、まずはレジスタンスラインへ転換する可能性がある5,720レベルの攻防に注目したい(1時間足を参照)。このラインを突破すれば、5,750レベルの攻防に注目したい。この水準はフィボナッチ・リトレースメント38.2%戻しにあたり、かつ200日線が推移している。すぐ上には21日線が低下し、200日線とともにレジスタンスゾーンを形成する可能性がある。

S&P500が200日線を完全に上方ブレイクし、かつこの移動平均線がサポートラインへ転換すれば、5,826ポイントを視野に上昇幅の拡大を想定したい。

レジスタンスライン
・5,826:半値戻し、一目基準線(日足)
・5,750:38.2%戻し、200日線(日足)
・5,720:レジスタンス転換の可能性あり

短期サポートラインの維持が焦点に
日足のMACDはゴールデンクロスへ転じたが、ゼロラインを下回る状況が続いている。ADXは25以上の水準にあるが、トレンドは横ばいへ転じている。21日線と200日線、そして13週線と26週線でともにデッドクロスへ転じるムードが高まっている状況も考えるならば、S&P500の地合いは弱い。

この状況で景気懸念を強める経済指標が続けば、S&P500は以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。週間の予想レンジ下限は、昨年4月の安値を基点とした短期サポートラインが推移している5,440レベル。

現在、サポートラインとして意識されている日足の一目転換線を下方ブレイクする場合は、下落相場を止めた5,500ポイントの攻防を想定したい。今月11日の安値5,528ポイントの下方ブレイクは、5,500ラインをトライするシグナルとなろう。

S&P500が5,500ラインを完全に下方ブレイクすれば、予想レンジの上限でもある短期サポートラインのトライを想定したい。このラインは、昨年4月以降の上昇トレンドを象徴している。ゆえにサポートラインのトライは、米株高トレンドの維持を見極める重要な攻防となろう。

サポートライン
・5,610:一目転換線(日足)
・5,563:3月14日の安値
・5,528:3月11日の安値
・5,500:サポートライン(週足)
・5,440:短期サポートライン(週足)


S&P500のチャート

日足:年初来

日足:年初来

出所:TradingView

週足:2024年3月以降

週足:2024年3月以降

出所:TradingView


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