金利の低下が促す米株高、S&P500指数は最高値更新が視野に 鍵は物価の動向
米国の主要な株価指数はいずれも50日線を上回り、反発相場の勢いが増している。S&P500指数(SPX)は5,200ポイント台へ再び上昇してきた。このまま史上最高値を更新できるかどうか?この鍵を握るのが物価指数と米金利の反応となろう。今後1週間の展望は?注目のチャートポイントは?
S&P500種株価指数、史上最高値を視野に強気相場が加速
米国の代表的な株価指数「S&P500種株価指数」(以下S&P500指数、SPX)が強い。
直近の動きを日足チャートで確認すると、昨年11月14日の安値と今年3月28日の高値のフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準4,957レベルで調整の反落相場が止まった。その後、21日線と50日線を難なく突破している。そして日足のモメンタムは、強気相場の勢いが増していることを示唆している(下のチャート、緑矢印を参照)。
これらテクニカルの状況を考えるならば、S&P500指数は今年の3月28日に付けた史上最高値5,254.35レベルのトライ、そして更新が焦点に浮上している。
S&P500種株価指数のチャート:日足 23年11月以降
米金利の動きがS&P500指数のトレンドを左右
S&P500指数(SPX)が21日線と50日線を一気に上方ブレイクしたのが5月以降である(上のチャートを参照)。
何があったのか?そう、米連邦公開市場委員会(FOMC)と4月の雇用統計である。そして最も重要なことは、これらの内容を受けて5月以降、米金利に低下の圧力がじわりと高まっていることである。
FOMC声明では、6月1日から保有する米国債の縮小ペースを月間で最大600億ドルから250億ドルに引き下げるとした(MBSの上限は350億ドルで維持)。バランスシートの圧縮ペースを減速させることは、金融引き締めのペースを緩めることである。これは中長期で米金利の上昇圧力を後退させる要因になり得る。
一方、短期的にはさえない経済指標、特に雇用や物価に関連した経済指標が米金利の低下圧力を高める要因となろう。
先週3日に米労働省が発表した4月の雇用統計では、労働市場の軟化が示唆された。そして昨日の新規失業保険申請件数(5月4日まで)が前週比2万2000件増の23.1万件と昨年8月の終盤以来、約8カ月ぶりの水準へ増加した。
直近の経済指標で労働市場の減速の兆候が示されたことで、米債市場では金利がじわりと低下している。
米金利の低下を受け、S&P500指数は5,200ポイントを回復した。下のチャートをみると、米金利の動きがS&P500指数のトレンドに大きな影響を与えることが分かる。
S&P500種株価指数と米金利のチャート:1時間足
次の焦点は来週の生産者物価指数と消費者物価指数
今日以降、S&P500指数(SPX)が史上最高値5,254.35を更新するきっかけとして注目したいのが、今晩の5月のミシガン大学消費者消費者態度指数(速報値)と来週の4月物価指数である。
前者の消費者態度指数と期待インフレ率の予想については、こちらのIG為替レポートをご覧いただきたい。
インフレの粘着性が重要なテーマであることを考えるならば、今日は期待インフレ率の動向で米金利が動く可能性があろう。これが予想外に低下する場合は、米金利の低下要因になり得る。米金利の低下はS&P500指数の上昇要因となろう。
しかし、米株高のトレンドが続くかどうか?を見極めるうえでより注目すべきは、来週発表される4月の物価指数-生産者物価指数(PPI)と同月消費者物価指数(CPI)となろう。
4月の雇用統計では労働市場の軟化が確認された。この状況でインフレが鈍化の傾向にあることも確認される場合は、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げの期待が高まることで、米金利に低下の圧力が高まることが予想される。
上で述べた5月の期待インフレ率の低下とインフレの鈍化が同時に確認される場合、S&P500指数は史上最高値を更新だけでなく、5,300ポイント台を目指す展開が予想される。
一方、これら物価指数でインフレの粘着性があらためて確認される場合、S&P500指数は史上最高値を前に調整売りの圧力に直面する展開が予想される。
米国 生産者物価指数と消費者物価指数の動向:23年以降
反落の局面では50日線のサポート転換が焦点に
今後発表される米経済指標でS&P500指数(SPX)に調整の売り圧力が高まる場合は、50日線のサポート転換が焦点となろう(一番上の日足チャート、緑ラインを参照)。この移動平均線は5,140前後で推移している(5月9日時点)。
S&P500指数が50日線を目指すシグナルとして、3つの水準での攻防に注目したい。
最初の水準は5,200レベルである。IGチャートで確認するとこの水準は、レジスタンスとして意識された経緯がある。ゆえに、サポートへ転換する可能性がある水準として注目したい。
次の水準は、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準5,164レベルである。IGチャートでは、今月8日に相場をサポートしたことが確認できる。そして最後の水準は、半値戻し5,147レベルである。
S&P500指数が最後のサポート水準(5,147レベル)を下方ブレイクする場合は、50日線のトライを想定しておきたい。
S&P500指数が50日線をトライしても、この移動平均線で反発する場合は、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。
逆に50日線を下方ブレイクする場合は、新たな下限として21日線を想定したい(下のチャート、青ラインを参照)。
S&P500種株価指数のチャート:1時間足 4月以降
S&P500種株価指数のサポート水準
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