再び20万人超の雇用増ペースに
8月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比20.1万人増と市場予想の同19.0万人増及び前月の同14.7万人増を上回った。労働人口の伸びに合わせ、月12万人の就業者数増が必要であるが、6ヵ月移動平均の雇用者数は約20万人前後の増加と、極めて良好な雇用状況と言えよう。
失業率は3.9%と前月比横ばいだが、労働意欲はあるが職探しをしていない者、正社員を望むがパートタイムの就業者などを含む広義の失業率は0.1ポイント改善し7.4%と2001/4以来の水準となった。企業活動は活発であり、労働市場は当面、好調を維持することになりそうだ。(庵原)
賃金上昇、インフレは目標水準!
良好な景気や業績動向の中、高水準ながら伸び率横ばいが続いた賃金上昇率であったが、足元で伸び率が高まった。8月の平均時給は、前年同月比2.9%増と市場予想及び前月の同2.7%増から大幅に加速し、約9年ぶりの水準となった。持続的な雇用拡大が賃金上昇率を押し上げたと思われる。
また、コアCPIは2%超で推移し、FRBが物価目安とするPCEコアは既に目標の2%水準を達成している。FRBの金融正常化に向けた追加利上げが予想される。ただ、長期金利上昇ペースと同様に緩やかなピッチでの利上げとなろう。ただ、追加関税によりインフレが高まる可能性があり注視したい。(庵原)
貿易戦争で世界の景気動向は?
米中など、米国に端を発した貿易戦争が激化している。世界景気の動向を見極めるうえで、世界の貿易動向(輸出入金額)に注目したい。WTOによればマイナスが続いた世界貿易は2015/5の前年同月比▲14.4%を底にマイナス幅が漸減。2016/11にプラス転換し、以降データ、2018/7まで21ヵ月連続でプラスとなった。
IMFの世界経済見通しによれば、世界の成長率は2016年の前年比3.2%増を底に回復しており、貿易動向との一致が確認できる。ただ、2018/2に8ヵ月連続の2桁成長が途切れ、今年3月と6月には1ケタ成長に伸びが鈍化。7月は同13.1%増と再加速したが、追加関税発動前の仮需の側面もあろう。引き続きデータを注視したい。(庵原)
【世界貿易は拡大維持~貿易戦争の世界景気への影響を見極めたい!】
業績動向、業種分類変更も注目
9/21現在、S&P500構成企業のEPS増益率は、2018/12期3Q(7-9月)が前年同期比19.3%増、通期で前期比23.5%増の見通し。減税効果や世界景気拡大などが業績押し上げへ。セクター別には、Iot、次世代通信5G、データセンター向けやAI、EV、自動運転など半導体需要拡大などからハイテク、金利上昇や株高で金融、原油高もありエネルギーなどの増益率が高い。ただ、先行きの増益率鈍化に注意したい。
また、9/28引け後にS&Pが業種分類を変更し、12/3にMSCIが世界産業分類基準(GICS)を変更し指数を再構成する予定。投資家のポートフォリオ再構築が想定され、関連としてアップル(AAPL)やアマゾン・ドット・コム(AMZN)などの株価動向に注目したい。(庵原)
年末に向け相場は一段高?
今年もクリスマスラリーはやってくるのか?答えはイエスであろう。通商問題を抱えながらも、景気指標、企業業績とも歴史的高水準にある一方、主要株価指数のPERなどバリュエーションに過熱感は見られない。FRBは金融引き締めを進めているものの、金利水準はヒストリカルに見て未だ低水準である。
減税効果浸透で業績が押し上げられ賃金は上昇し、株高、不動産価格上昇など資産効果が消費を押し上げている。アップル(AAPL)の新型iPhoneは高額ながら、販売も好調のようだ。北朝鮮問題や貿易問題などから、上値を抑えられてきた2018年の米国株だが、NYダウやS&P500が高値更新など上昇の兆しが見られる。年末に向けて一段の上昇相場が期待できそうだ。(庵原)
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本レポートの作成者:公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員 庵原浩樹
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