銅価格、高値圏にとどまる見通し 中長期的には1万5000ドル超との声も
銅価格は4月半ばから一段高となり、5月に入り1トン=1万ドルを突破した。中国当局による介入が上値を抑える可能性があるが、需給は依然として強く、価格は当面、高値圏にとどまる見通しだ。中長期的には1万5000ドルを超える水準への上昇もあり得るとの見方もある。
銅価格は4月半ばから一段高となり、5月に入り1トン=1万ドルを突破した。中国当局による介入が上値を抑える可能性があるが、需給は依然として強く、価格は当面、高値圏にとどまる見通しだ。中長期的には1万5000ドルを超える水準への上昇もあり得るとの見方もある。
ロンドン金属取引所(LME)の銅相場は指標となる3カ月先物価格が5月10日に一時、1万747.50ドルまで上昇し、過去最高値を更新した。2020年3月に新型コロナウイルスの感染拡大(パンデミック)の影響で価格は一時5000ドルを割り込んだが、ここから倍以上になった。
中国の介入による同国の先物価格安の影響により、5月後半に一時、9800ドル付近まで後退したが、ほどなく1万ドル台を回復した。28日の終値は1万258ドル。
中国の規制強化
中国政府は4月以降、インフレを抑制するために商品(コモディティ)価格を抑える方針を示してきた。新華社は同月、李克強首相が商品価格の上昇に伴う企業へのコスト圧力を緩和するために、原材料市場の規制を強化する必要性を唱えたことを伝えた。
また、劉鶴副首相が主宰した同月の金融安定発展委員会の会議でも商品価格動向を注視する方針が示されていた。
中国は5月に入ると介入を強化。銅と同様に価格が高騰していた鉄鉱石の先物相場の証拠金の引き上げを10日に発表し、23日には国家発展改革委員会が鋼材に加えて銅など非鉄金属の取引過熱に対しても警告を発した。同委員会は25日にも5カ年計画(25年まで)の期間中に主要商品の価格管理を強化すると表明している。
商品価格の高騰を背景に中国では生産原価が急速に上昇。製品価格への転嫁が避けられない状況にある。製造業の一部はコスト削減のために雇用拡大に慎重になりつつあり、政府は物価高に伴う国内経済への下押し圧力を警戒している。
銅の需給
銅市場の需給は依然として強い。パンデミック後の景気回復期における需要が供給を上回るとの期待が価格上昇の背景にある。
世界の銅加工業者でつくる国際銅加工業者協議会(IWCC)は先週、21年の銅需要が前年比4.9%増の2445万8000トンになると予想。20年の同2.7%減から大きく回復するとみている。
一方、調査会社グローバルデータの2月の世界銅生産見通しでは、21年の銅の生産は前年比5.6%増の2130万トンになる。20年は2.6%減たった。生産は24年にかけて2460万トンまで増加する見通しという。
中長期的にも需要は旺盛な伸びが見込まれている。クリーンエネルギーを実現するための電気自動車(EV)や風力発電などに銅は不可欠だ。
大手商品商社トラフィグラは、各国が打ち出す脱炭素化に向けたインフラ計画やEVの需要拡大で、30年の銅需要は3330万トンに増加すると試算している。
一方、銅鉱山の開発は進まず、生産は伸び悩む見通し。主要生産国では鉱山への投資がとどこおりそうだ。
世界最大の銅生産国であるチリでは、重い税負担を鉱山業界にもたらす法案が提出されている。
主要生産国の一角、ペルーでもまた、次期大統領の有力候補、ペドロ・カスティジョ氏が急進左派的な政策を掲げており、銅鉱山などを国有化するとしている。大統領選で争うフジモリ元大統領の長女ケイコ氏との決選投票は6月6日に実施される。
2万ドル超への上昇も
米国で量的緩和の縮小(テーパリング)が進み、金融正常化のプロセスが進めばドル高になり得る。国際商品にとってドル高は下落要因だ。
ただ、銅市場の需給逼迫をもってすれば、ドル高は銅価格の上昇を遅らせるに過ぎない可能性がある。
ゴールドマン・サックスは4月、「Copper is the New Oil(銅は新たな石油)」と題したリポートを発表。脱炭素化の動きに伴う需要の増加に供給の増加が見合っておらず、価格は25年までに1万5000ドルになる可能性があるとしている。
またバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)は5月、21年と22年の銅市場は供給不足に陥る可能性があると指摘。銅価格は向こう1年で1万3000ドルまで上昇するとの見方を示した。
23年以降は銅スクラップの使用増加により、市場は均衡を取り戻すとバンカメは予想。ただし、スクラップの供給増加が実現しない場合、在庫は3年以内に枯渇する可能性があり、その場合は激しい価格変動が引き起こされる可能性があると指摘。2万ドルを超える水準への価格上昇の可能性を予想した。
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