金相場見通し: 売られやすい地合い続く ドル睨みの様相
金相場が売りに押されている。昨年夏までは米国の実質金利に相関性を示していた金だが、現在は米長期金利との連動性を強めるドルの為替レートを睨んでの推移となっている。ドルが強含みとなる局面が見込まれ、金は売られやすい地合いが続くだろう。
金相場が売りに押されている。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の先物は期近が18日に一時、1トロイオンス=1766.6ドルまで下げ、中心限月として昨年7月以来の安値を付けた。
昨年夏までは米国の実質金利に相関性を示していた金だが、現在は米長期金利との連動性を強めるドルの為替レートを睨んでの推移となっている。ドルが強含みとなる局面が見込まれ、金は売られやすい地合いが続くだろう。
米実質金利は過去最低付近
金の価格は、米国の実質金利が低下すれば上昇しやすいという関係性がある。
昨年8月に実質金利がマイナス1%を割り込み、過去最低水準を付けた時点で、金先物は2089.2ドルと中心限月としての最高値を付けた。その後、実質金利がマイナス幅を縮小すると、金も上値を削る動きとなった。
しかし、金と実質金利の関係性は弱まっていく。11月上旬、マイナス0.8%付近まで上昇していた実質金利が再び低下に転じた後も金の上値は重いままだった。
年が明け、バイデン次期米大統領(当時)が1月中旬に1兆9000億ドル規模の経済対策案を打ち出し、米国債増発の思惑が台頭。さらに米国でのコロナワクチン接種の拡大で景気回復への期待が広がり、長期金利の上昇が顕著となる。
昨年夏には0.5%付近まで低下していた米10年物国債利回りは、年初に1%の節目を突破。2月に入ると、経済対策案が民主党単独で可決されて早期に施行されるとの期待が高まったこともあり、上げ足を速めた。これまでに約1年ぶりの高水準となる1.3%台まで上昇している。
それと同時に、インフレ期待も上がってきている。インフレ期待の代表的指数である10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は1月に2%の節目を突破し、現時点で2.24%まで上昇した。
この結果、名目金利からインフレ期待を差し引いた実質金利は足元でマイナス1%付近となっている。これは昨年8月とほぼ同じ水準だが、それでも金は上昇する気配をみせていない。
一方、長期金利の上昇はドル高を促進させている。ドルの総合的な強さを示すドル指数は昨年3月に直近のピークを付けた後、米国でのコロナ感染の深刻化などを受けて急速に低下したが、年初以降は反発している。
金価格は足元ではドルとの関係性を強めており、ドルの上昇に伴い、ドルの代替投資先とみなされる金が売られる展開になっている。
緩和局面は継続へ
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は10日の講演で、コロナ禍で労働市場の回復は遅れているとし、最大雇用に達するまでゼロ金利政策を維持すると語った。当面は2%を上回る物価上昇率を目指すとも述べている。
1月の米雇用統計で失業率は6.3%まで低下したが、職探しを諦めた失業者が多く、労働参加率も低下している。この講演でパウエル議長は、1月の実質的な失業率は10%近いとの見方を示した。
FRBは最大雇用の目安として4.1%の失業率を挙げており、この水準に戻るのは23年末と予想する。
また、17日公表した1月26~27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で、市場が警戒する物価上昇は一時的であり、長続きしないとFRBがみていることが明らかになった。物価上昇率は4~6月に2%を超えると予想しているものの、これは昨年のコロナ禍で大幅に鈍化した反動に過ぎないという。
市場で景気回復期待が高まるなかで、金融緩和局面は当面続く。長期金利は上値を試しながら上昇を継続し、ドルは強含みでの推移が見込まれる。こうした環境のもと、金には下押し圧力が続く可能性がある。
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