インフレは景気回復の象徴から景気回復の懸念材料へ / ドル円の焦点
サマリー:『インフレの加速で米長期金利は1.7%の攻防が焦点に。今のマーケットの状況は米ドル買いの圧力が高まりやすい。ドル円の焦点とチャートポイントは?』詳細はマーケットレポートをご覧ください。
インフレは景気回復の象徴から景気回復の懸念材料へ
4月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で4.2%の上昇と、市場予想の3.6%を大幅に上回った。コア指数も同年同月比で3.0%と、市場予想の2.3%を上回った。
今回の結果を受け、市場が抱くインフレ期待は5年のそれが2.8%付近まで、10年のそれが2.54%まで上昇している。
この動きに米株(S&P500)の価格チャートを照らし合わせると、トレンドの乖離が見られる。
2020年は、インフレ期待と米株のトレンドが一致していた(上昇トレンドで一致していた)。これは米国の景気回復を意識した動きだった。
しかし現在の乖離は、インフレの上昇が米経済の回復を象徴する動きではなく、米経済の回復を阻害する懸念材料として市場関係者に意識されていることを示唆している。
現在の状況は米株にとってネガティブである。このタイミングで米長期金利(以下米金利)が節目の1.7%を完全に突破してくるようだと、外為市場では米ドルを買い戻す動きが加速しよう。
期待インフレ率と米株の比較チャート
米ドル買いの圧力が高まりやすい状況
上の状況を踏まえた上で外為市場のトレンドを考えると、現在は米ドル買いの圧力が高まりやすい状況にある。米金利の上昇に連動し、実質金利も反転しているからだ。
上でも指摘したとおり、米金利が1.7%の水準を突破する展開となれば、実質金利もこの動きに連動しさらにマイナス幅が縮小しよう。
そしてグロース株だけでなくバリュー株までが売られている米株の動向を考えるならば、米金利のさらなる上昇は株安の圧力を高める可能性が高い。リスク回避相場もまた、米ドル買いの要因となろう。
米長期金利と実質金利のチャート
ドル円の焦点
筆者は、株高と金利の上昇が同時に発生する局面で、ドル円(USDJPY)が110円台をトライすると予想していた。
しかし、インフレ懸念を意識した米ドル買いの圧力がリスク回避の円買いの圧力を上回っている状況を考えるならば、米金利の上昇のみでも110円をトライする可能性が出てきた。
テクニカル面でもドル円の強さがうかがえる。
先月23日に75日EMAで相場がサポートされ、今月の上旬には50日EMAがサポートラインとして意識された。
そして110.96を起点とした短期レジスタンスラインの突破に成功している。しかも大陽線での突破である。
MACDではゴールデンクロスが示現し、モメンタムはゼロラインを上回ってきた。
目先、ドル円の下落要因は、米株の続落によって米金利が低下することである。この局面となれば、ドル円には調整の反落圧力が高まろう。
だが、インフレの加速が意識されている状況を考えるならば、米金利がレンジの下限1.5%の水準を一気に下抜ける可能性は低い。よって、現在の状況ではドル円の下落幅も限定的と予想する。
目先の焦点は50日EMAの維持である。このEMAがサポートラインとして意識されていることが確認できる場合、ドル円の110円トライを意識しておきたい。
ドル円のチャート
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