FOMC後の米ドル相場の展望 / ドル円とユーロドルの展望
米CPIはインフレの鈍化傾向を示す結果となった。外為市場では米ドル安が加速している。次の焦点は連邦公開市場委員会(FOMC)。内容次第で米ドル安の加速も米ドルの買い戻しも予想される。ドル円とユーロドルの焦点は?注目のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
FOMC後の米ドル相場の展望
【サマリー】
・米CPIでインフレの鈍化傾向が確認され米ドル安が加速
・12月FOMCではパウエルFRBのインフレリスクに対する見解に注目
・FOMC後の米ドル相場の展望について
・ドル円とユーロドルのテクニカル分析について
インフレの鈍化で米ドル安が加速
11月の米消費者物価指数(CPI)は前月比で0.1%、前年同月比で7.1%と、いずれもエコノミストの予想を下回った。コア指数も前月比で0.2%、前年同月比で6.0%と予想以下の伸びとなったことで、米国のインフレが鈍化の傾向にあることが確認された。
11月CPIの結果を受け、米債市場では2年債利回りと10年債利回りがともに低下した。米金利の低下に連動し、外為市場では米ドル安が加速した。
米ドル相場のパフォーマンス:12月13日
FOMCと外為市場の展望
FOMCと米ドルの買い戻し
次の焦点は、今年最後の連邦公開市場委員会(FOMC)である。
米国のインフレは鈍化の傾向にある。しかし、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は1970~80年代初頭を引き合いにインフレの抑制が第一であり、これが不十分に終わるリスクを繰り返し強調している。ゆえにFRBはインフレリスクに対して高い警戒レベルを維持する可能性がある。
パウエル議長がこの点についてあらためて強調する場合、早期(23年)の利下げ期待が後退することで(来年に利上げが停止されても高い水準を維持する観測が強まることで)、米金利が反発し米国株が下落することが予想される。このケースでは、米ドルの買い戻しを想定しておきたい。
また、パウエルFRBがインフレ抑制重視のスタンスを維持し、政策金利の予想(ドットプロット)が大幅に上方修正(5%超に上方修正)される場合、米ドル相場の反発圧力が増すことが予想される。
FOMCと米ドル売りの加速
一方、インフレの鈍化傾向を受け、今回の会合で景気の動向にも注意を払うハト派の意見が重視される場合は、来年最初のFOMC(1月31~2月1日開催予定)でさらなる利上げ幅縮小の可能性が高まるだろう。パウエル議長の会見でこの点についてのシグナルが得られる場合は、「米金利の低下→米ドル売り」のトレンドがさらに加速することが予想される。
また、このケースでは政策金利の予想(ドットプロット)が上方修正されても、利上げペース減速の先にある利下げの方が強く意識されることが予想される。
なお、短期金融市場の政策金利の予想推移を確認すると、11月CPIを受け予想ターミナルレートの水準が4.8%台へと低下している。そして高い水準を保つ期間は2か月程度であり、来年の後半にFRBは利下げ政策へ転じる可能性を織り込んでいる。
米政策金利の予想推移
ドル円とユーロドルのチャートポイント
ドル円(USDJPY)
138.00レベルがレジスタンスとして鮮明に
ドル円(USDJPY)のトレンドは、引き続き米金利の動きに左右されよう。今日の米金利はFOMC後に大きく動くことが予想される。
11月中旬以降のドル円の動きを確認すると、138.00レベルがサポートからレジスタンスへ転換していることがわかる。昨日の日足ローソク足は大陰線となり、かつ相場の戻りが137.97レベルで止められた。昨日の反落は、138.00レベル(フィボナッチ・リトレースメント23.6%)の“レジスタンス転換”を市場参加者に強く印象付けた。よって、FOMCを受けて米金利が反発しても、ドル円は138.00レベルで上昇が止められる展開を警戒しておきたい。
なお、21日線(MA)が138.00付近まで低下している。テクニカルの面でもドル円は138.00レベルで反落するリスクがある。
133.60ブレイクなら下落幅の拡大を警戒
FOMCを受けて「米金利の低下→米ドル売り」となる場合、ドル円は今月2日の安値133.62レベルのトライおよびブレイクが焦点として浮上しよう。
米ドル安が加速し、ドル円が133.60台をあっさりと下方ブレイクする場合は、このレポートで何度か取り上げているサポートポイント「131.50レベル」を視野に下落幅の拡大を警戒したい。
ドル円が131.50のサポートポイントをも下方ブレイクする展開となれば、8月2日の安値130.40レベルの攻防が焦点として浮上しよう。この攻防は、130円台維持の攻防と捉えたい。
ドル円のチャート
ユーロドル(EURUSD)
下落トレンドを象徴するテクニカルラインを突破
ユーロドル(EURUSD)は米ドル安にサポートされ、レジスタンスの1.06突破に成功した。この水準の突破は、単にレジスタンスとして意識されていたチャートポイントを突破したというだけでなく、テクニカルの面でも重要な意味を持つ。
そのテクニカルとは、52週移動平均線(MA)とレジスタンスラインである。2021年5月以降から発生した下落トレンドを象徴するこれらのテクニカルラインを突破した状況は、ユーロドルの下落トレンドが終焉に向かっているシグナルが点灯したと考えることができる。
だが、現在の相場(上昇トレンド)には過熱感がある。ユーロドルの上昇トレンドが続くかどうかは、FOMC次第である。FOMC後に米ドル安のトレンドが加速する場合は、今年の5月下旬から6月上旬にかけて相場の上値を止めた1.08レベルまで一気に上昇する可能性がある。FOMCが “ハト派”、15日の欧州中央銀行(ECB)理事会が “タカ派”と市場で受け止められる場合は、半値戻しの水準1.09レベルを視野に上昇幅の拡大が予想される。
ユーロドルのチャート
反落局面での注目ポイント
一方、FOMCが米ドル買いイベントとなる場合は、ユーロドルの反落を想定しておきたい。このケースでの焦点は、サポートラインとして意識されている10日線(MA/1.0542レベル)の維持となろう。
11月以降の上昇相場を受け、オシレーター系指標(ストキャスティクス/RSI)では相場の過熱感が見られる。米ドルの買い戻しでユーロドルが10日線を下抜ける場合は、明日以降フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準1.0451レベルを視野に下落幅の拡大が予想される。このテクニカルポイントには、21日線(MA/1.0444レベル)が上昇している。
ユーロドルのチャート
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