Analyst's view
市場の焦点は米中首脳会談の行方と3月米雇用統計に集中している。前者の注目点については、6日のレポート「米中首脳会談の注目点」で指摘済み。市場全体のリスク要因として注視すべきは、朝鮮半島情勢に対する米国の新たな戦略の展開とそれに対する中国の理解となろう。米国が主張する「すべてのオプション」を含めた新たな制裁強化に中国が理解を示す場合、東アジアの地政学的リスクが意識され、外為市場では円高圧力が集まろう。
一方、3月雇用統計で注視すべきは、賃金動向となろう。失業率が5.0%を恒常的に下回る状況では、今後も20万人以上の雇用増加ペースを維持することは不可能だろう。つまり「量」の面での目的はすでに達成済みということである。となると、次は「質」の面で向上しているかどうか、この点が重要な焦点となってくる。それを見極める上で重要な材料となるのが、賃金の伸びである。2月の平均賃金の伸びは前年同月比2.8%増と、1月の同2.5%増から加速していることが判明。この傾向が続いていることが確認されれば「賃金の増加→消費の拡大→インフレ圧力の高まり→イエレンFRBによる持続的な利上げ」が投資家間で連想され、まずは低下幅が拡大している米金利に反発圧力(債券売り圧力)が強まろう。米金利の反発は外為市場で米ドル買い圧力を強めるだろう。ドル円は短期レジスタンスラインを突破し、直近安値110.11からの23.60%戻し112.11レベルをトライする展開が想定される(チャート参照)。ただ、米ドル買いトレンドが形成されるかどうかは、米中首脳会談の内容次第だろう。
一方、賃金の伸びが抑制されていることが確認された場合は、非農業部門雇用者数変化が市場予想を上回っても上値が抑制され、110円台を中心とした攻防の継続を想定したい。下値の焦点は3月27日安値110.11、心理的節目でありビッドが観測されている110.00。