Analyst's view
トランプ政権の国内経済対策(特に大型減税政策)への根強い期待を背景に、米株は連日で過去最高値を更新中。気になるのは現在の株高に米金利が追随できていないことだろう。昨年の米大統領選挙後に発生したトランプ相場は、これまで金融市場の主役であった金融緩和政策(=株高 / 金利低下政策)にピリオドを打ち、財政拡張(=株高 / 金利上昇政策)の幕上げを告げる象徴となった。しかし、今年に入ると米金利のみが上下に振れる不安定な状況へ陥っている。下図チャートでは米株(S&P500)と米金利(10年債利回り)の年初来パフォーマンスを比較しているが、恒常的にプラス圏を維持している米株とは対照的に米金利の不安定さが鮮明となっている。今年1月上旬の低下局面は、昨年12月FOMC後の調整地合いの側面が強い。しかし、1月下旬以降に不安定化したタイミングは、①トランプ政権の不安な船出、②ミックス状態の指標データ(抑制された賃金の伸び)、③利上げについてのイエレンFRBの不透明なスタンスが意識されたタイミングと重なる。言い換えれば、トランプ政権の政策運営能力とイエレン政策に対する不透明感が同時に意識されているということだが、直近の米金利が指標データの内容とFEDサイドの言動に敏感に反応している点を考えるならば、現在は後者の方が米金利のトレンド決定要因となっている。
本日は1月中古住宅販売件数の発表と米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表が予定されいる。前者の内容が市場予想(年率換算件数555万件 / 前月比1.1%)を上回れば、米国市場は素直に「株高 / 金利上昇」で反応しよう。外為市場では米ドル買い圧力が強まろう。ドル円は114円トライの展開が想定される。一方、欧州政治リスクが意識され独金利に低下圧力が強まっているユーロドルは、目先の重要サポートポイント1.0520レベルを下方ブレイクする展開を想定したい。また、FOMC議事録で早期利上げについての前向きな議論が行われていたことが判明すれば、「米金利上昇 / 米ドル買い」の展開となろう。一方米株は、連日の高値更新を考えるならば、利益確定売りの材料とされる可能性がある。また、本日は中立派と目されるパウエルFRB理事の講演が日本時間翌午前3時に予定されている。