Market Analysis
低下基調にある米株のボラティリティが、今週再び上昇するならばその主因はシリアリスクにあろう。イスラム国の脅威が去り、ロシアとイランの庇護を受けているアサド政権がすんなり反政府勢力の拡大を許す可能性は低い。オバマ前政権時代にシリアの化学兵器使用に制裁を課さなかったことをトランプ米大統領が批判した経緯があることも考えるならば、シリアリスクは常にくすぶるだろう。実際に今週も爆撃があれば、米株のボラティリティは再び上昇しよう。米株安は一時的にせよ世界的な株安要因となり、外為市場では米ドル安と円高の圧力が高まろう。シリアリスクの相殺要因として注視すべきは、今週から本格化する企業決算である。先週の決算内容は総じて市場予想を上回った。シリアリスクで株安となっても、良好な企業決算が続けば米株のサポート要因となろう。株高維持ならば、円相場は円安優勢の局面が散見されよう。
国際政治でもう一つ注視すべきイベントは、日米首脳会談である。様々なテーマがある中、各市場の耳目は通商政策に集まろう。カナダやメキシコと違い日本は鉄鋼・アルミニウム関税の対象国となっており、米国サイドの不公平感が根強いことがうかがえる。11月の中間選挙も考えるならば、今回の会談で米有権者に一定の成果を示すため日本に対し強行スタンスで臨む可能性がある。通商政策リスクの懸念が再浮上すれば、外為市場では米ドル安以上に円高を警戒したい。尚、米国のTPP復帰がにわかに意識され始めているが、トランプ米大統領はTPP離脱を政権公約に掲げ且つ再交渉の条件として米国有利の合意を示唆し、一方のTPP11は再交渉に応じないスタンスであることを考えるならば、TPP関連の議題が「株高→円安」トレンドをサポートする可能性は低い。リスク選好(株高 / 円安)維持の鍵はやはり米四半期決算にある。
ドル円は、引き続き105.00-108.00レンジの攻防がメインシナリオとなろう。108.00にはオファーが観測されている。一方、ユーロドルも1.2200-1.2500のレンジ相場を想定したい。1.2200にはビッドの観測あり。
尚、国際政治以外で注視すべき材料は、中国の指標データ、IMF世界経済見通し、米地区連銀経済報告(ベージュブック)そしてFEDスピーカーによる公演となろう。本日(17日午前2時15分)はボスティック・アトランタ連銀総裁が経済と市場トレンドについて講演する予定である。同氏は5日の米TVにて景気見通しに自信を示し、追加利上げについても前向きなスタンスを表明している。
【チャート①:米株ボラティリティ】