Analyst's view
ドラギECBは、イエレンFRBに追随することを改めて表明した。さらにその後ろには英国、カナダそして豪州も金融緩和政策からの脱却を模索し始めている。昨年の米大統領選挙以降、世界の政策潮流が急速に変化する中、その流れに乗り遅れているのが、他ならぬ黒田日銀である。デフレ経済脱却の道半ばで立ちすくむ黒田日銀の存在は、時間が経つごとに際立つだろう。この状況は基本的に円安要因であるが、これは金融政策の面だけで判断した場合である。国際政治の情勢も絡めて考えるならば、事はそう単純ではない。黒田日銀の異質な存在感が高まれば、それは米ドル安政策を志向するトランプ政権のターゲットになることを意味するからだ。
上述のとおり、米ドル相場の方向性を示すドルインデックスは今年3月以降、持続的な米ドル安圧力がかかり続け、昨日は昨年8月18日以来の水準まで低下した(チャート①参照)。この間における主要なドルストレートの騰落率を確認すると、ドル円の下落(=円高)率が低いことがわかる(チャート②参照)。対円以上に米ドル高が進行しているのがブラジルレアルだが、これは5月の政治リスクというイレギュラーが影響したためである。7月以降、対米ドルで急騰している点を考えるならば、日本円よりも米ドル安が進行したと捉えることができる。年後半のドル円は、トランプ政権からの圧力に直面する可能性が高いだろう。
現状は世界的な株高傾向にある。このトレンド自体は円安要因であることから、米ドル安圧力を相殺しよう。よって、現時点でドル円が108円を一気にトライするリスクは低い。目先は、111.00を挟んで展開している日足一目雲の攻防を見極めたい。このテクニカルで反転するならば、再び114円台を目指す可能性が出てくる。逆にこのレベルを下方ブレイクするならば、110.00トライのシグナルとして警戒したい。詳細なチャート分析は、本日のテクニカルレポートにて。