Analyst's view
下の米金利比較チャートを確認すると、昨年12月下旬より金利の上昇圧力が後退していることがわかる。このタイミングで本日の米雇用統計(1月)が冴えない内容となれば、金利の調整圧力がさらに強まり、外為市場では米ドルロングを解消する動きが加速しよう。ドル円は昨年12月上旬にレジスタンス / サポートとして意識された114.00レベルをトライする展開が想定される。このレベルをも下方ブレイクする展開となれば、昨年12月の安値レベル113.00を視野に下落幅が拡大しよう。一方、ユーロドルは昨年12月5~8日にかけてローソク足の実体ベースで上値がレジストされ続けた1.0760レベルの突破が焦点となろう。
中長期の観点から米金利の低下と米ドル安を誘発するもうひとつのリスク要因として注視すべきは、トランプ次期政権の保護主義度合いだろう。本日日本時間早朝に同氏はツイッターでトヨタのメキシコ工場建設を非難するメッセージを発してきた(Toyota Motor said will build a new plant in Baja, Mexico, to build Corolla cars for U.S. NO WAY! Build plant in U.S. or pay big border tax)。大統領選挙後、トランプ氏は米国内の大手企業の経営に露骨な介入をしているが、米国外の経営戦略に口を出してきたのはこれが初めて。露骨な経営介入が今後加速すれば、効率的な企業経営や国際供給網が混乱し、結果、米国株式と米国経済の下押し要因となろう。トランプ次期政権の保護主義度合いを見極める上で、1月20日以降の対中政策が重要な焦点となろう。
ただ、行き過ぎた米金利の上昇を是正する動きとそれに伴う米ドルロングの調整は、株式市場や国際商品市況にとってはポジティブ要因でもある。事実、年明けのグローバル株式市場に大きな混乱は見られず、新興国株式の堅調さが目立つ。また、外為市場ではリスク性の高い資源国通貨と新興国通貨が堅調に推移している(対ドル)。ユーロドルでもショートカバー(ユーロ買い / 米ドル売り)の圧力が強まっている点を考えるならば、目先円相場全体が円高へ大きく振れる可能性は低い。そのような展開となるならば、きっかけは上記のトランプリスクが意識され株式市場が崩れる時だろう。