Analyst's view
本日最大のイベントは、トランプ次期大統領の記者会見となろう。会見は、米国東部時間11日午前11時(日本時間12日午前1時)からニューヨーク市内で開く予定となっている。昨年12月15日に予定されていた会見を直前になって延期した経緯があり、一部では今回の会見も実施されない可能性があるとの指摘がある。だが、ツイッター上での一方的なコミュニケーションに批判が巻き起こっている現状を考えるならば、トランプサイドとしてはその批判を封じ込めるためにも今回の会見は実施すると思われる。
大統領選挙後のトランプ次期大統領の言動を確認すると、米国内では雇用の安定と減税(=海外工場の建設を断念した企業への減税)にフォーカスしていることがわかる。よって、今回の会見では米国内の雇用増を軸とした経済促進政策を訴えてくる可能性が高い。大統領選挙期間中に提唱していた本国投資法第2弾も含めた減税政策およびインフラ政策がそれ(=経済促進政策)にあたるが、実現可能な具体策を示すならば米国経済の促進期待が再び強まり「トランプラリー」は再始動しよう。具体的には、再び米金利に上昇圧力が強まることで、今年に入り拡大傾向にある米国株式との乖離が収れんされよう(チャート①参照)。その過程で外為市場では再び米ドル高圧力が強まろう。ドル円は118.66レベル(昨年12月15日高値)、ユーロドルは1.0339レベル(1月3日安値)を視野に米ドル高が進行しよう。
問題は、10日のレポート「トランプラリー VS トランプリスク」でも指摘した強硬な対中政策の言及の有無だろう。トランプ次期大統領は、昨年12月上旬にツイッター上で南シナ海での中国サイドの活動をけん制。また、人事面では新設された国家通商会議(NTC)委員長にカリフォルニア大教授のピーター・ナバロ氏、米通商代表部(USTR)代表に米鉄鋼大手USスチール顧問弁護士のロバート・ライトハイザー氏といった対中強硬派で知られる人物を起用している。これら中国に対する言動と米国経済第一主義を掲げるトランプ次期大統領の思惑を鑑みるならば、中国に対し厳しいスタンスを示す可能性がある。直接的な為替相場への言及はなくとも、中国批判は円高圧力を強める要因となり得る。米国は、2016年4月に公表した外国為替報告書で中国のみならず日本も為替操作国指定の前段階である「監視リスト」の対象に入れている。トランプ次期大統領が中国製品に対する45%の関税強化の実施や就任と同時に中国を為替操作国に指定するとあらためて表明するならば、「次は日本」という連想を背景にこれまでの円安トレンドに調整圧力が強まる可能性は十分にあろう。ドル円チャートを確認すると、変則的ながらも118.60台でダブルトップ形成の可能性が暗示されている。また、デッドクロス(21日MA>10日MA)が示現している点も考えるならば、テクニカル面では調整局面へシフトする可能性が示唆されている(チャート②)。