Analyst's view
米ドル相場のトレンドを示すドルインデックスは16日、小幅ながら反発した。しかし、ドル円は6日連続で陰線が示現。現時点では、昨年後半に急速に進行した「ドル高/円安」の調整相場の域を出ない。しかし、これまで米ドル高を牽引してきたトランプ政策への期待が後退している点を考えるならば、少なくともトランプ新政権が船出する1月20日までは現在の調整相場が継続する可能性を意識したい。
目先のサポートポイントは3つ。ひとつは昨年12月上旬の安値113.00レベル。ふたつめは112.00レベル。週足の一目雲の下限と昨年12月高値118.66からの38.20%戻しがこのレベルを挟んで展開している点を考えるならば、テクニカル面で最も注視すべきはこの水準だろう。最後は118.66への上昇の起点となった111円ミドル前後(昨年11月28日安値111.36レベル)となろう。
昨日の動向で筆者が注目したのは、現在のドル円の下落が米ドル高の調整だけでなく円高圧力もにわかに強まっている可能性だ。上述したようにドルインデックスは小幅に反発し小陽線が示現。材料難にもかかわらず対ユーロ、資源国通貨そして新興国通貨で堅調に推移した。しかし、対円のみ下落したということは、徐々に「円高圧力>ドル高圧力」の状況へシフトしつつあることを暗示している。
クロス円で円高圧力の高まりを示すのが、ユーロ円とポンド円である。前者は124.00が明確なレジスタンスポイントとして意識され始め、5週連続で週足の雲の上限が上値をレジスト中(チャート1参照)。一方、ポンド円に至っては、先週後半に相場をサポートしていた日足の雲の上限を難なく下方ブレイク。次のサポートポイントは、週足の基準線と昨年12月高値148.46からの50.00%戻しが重なる135.53レベル(チャート2参照)。対照的に豪ドル円、NZD円そしてカナダ円が高値水準を維持している点を考えるならば、円高圧力が高まるきっかけは欧州情勢である可能性が高い。この観点で目先注視すべきは、やはりハードブレクジット懸念だろう。本日、英国のメイ首相は欧州連合(EU)離脱の計画について演説する。英紙サンデー・テレグラフ(15日付)が報じたように欧州単一市場と関税同盟からの離脱を示唆する内容となれば、ポンド円は135.53をあっさりと下方ブレイクしよう。それにつれてユーロ円も下落幅が拡大しよう。欧州株安となれば米株の上値を圧迫し、円相場全体で円高圧力が強まろう。ドル円も上述したサポートポイントを視野に調整が加速する展開が想定される。また、イタリア市場の動向もリスク要因として常に警戒したい。