Analyst's view
現在、米国情勢に関して筆者が注目しているのは、昨年11月の米国大統領選挙以降加速した米ドル高に対する米国要人の警戒レベルだ。13日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)とのインタビューでトランプ次期大統領は、中国の人民元操作批判とそれに伴う米ドル高にあらためて不満を表明した。また、トランプ次期政権の上級顧問に就任することが決まっている金融業界出身のアンソニー・スカラムッチ氏も17日、ダボス会議のパネルディスカッションにて米ドル高とそれに伴う新興国リスクについて言及。さらにはダドリーNY連銀総裁も同日の講演で、「最近の米ドル高は物価に下方圧力を加える」と言及してきた。筆者は、米株が崩れない限り明確な米ドル高けん制発言はないと想定している。しかし、その米株のパフォーマンスはここにきて頭打ち感が強まっている(下図チャート参照)。米金利の緩やかな低下、堅調な国際商品市況と新興国市場を考えるならば、現在のグローバル市場ではリスク回避圧力が強まっているわけではない。しかし、17日のレポート「不透明感強まる欧州通貨」でも指摘したように、欧州を震源としたリスクが米株の下落を誘発する可能性はくすぶっている(欧州株安→米株安)。また、トランプ次期政権自体が短期的にリスク要因となる可能性も出てきた。これに対する筆者の警戒感が高まったのが今月11日の記者会見だった。具体的な経済促進策には言及せず、米メディアとの亀裂の深さを印象付けただけにとどまったあの会見は、トランプ次期政権の政策運営能力に大きな不安を抱かざるを得ない内容だった。遅くとも今年後半までにはトランプ政権に参加した各要人や共和党の協力によって軌道修正(=現実路線の模索)が図られるだろう。だが、短期的にはトランプ政権の政策運営能力が米株の圧迫要因となる可能性がある点は要注意。
米株が崩れれば米国サイドの米ドル高に対する警戒レベルが一気に高まり、けん制発言が発信される可能性が高まろう。また、米株が崩れれば米金利の低下圧力が増すことで、米ドル相場の調整スピードが加速しよう。米金利低下と米株の下落が重なれば、円相場はドル円が円高の牽引役となろう。本日のチャートポイントについてはテクニカル分析レポート「IGテクニカル分析」を参照されたし。