Analyst's view
米株(S&P500)と金利(10年債利回り)の動向を比較したチャート①を確認すると、今年に入り広がった乖離が米金利の上昇により急速に収斂されていることがわかる。一見すると、トランプラリーの再始動(株高/金利上昇の共存関係復活)にも見えるが、米株の上値が徐々に切り下がっている点には注意が必要だろう。現時点では株安圧力が強まっているというよりも、今月最大のイベントであるトランプ次期大統領の就任式を控えたポジション調整地合いといったところ。しかし今後、根強い利上げ期待を背景とした米金利の上昇スピードが米株のそれを上回るならば、市場では金利上昇を超える企業の期待成長率が維持できるのか?という警戒感が台頭しよう。その警戒感を払拭する最大の材料はトランプ政策の着実な遂行である。だが19日のレポートでも指摘したように、直近のトランプ次期大統領の言動や米メディアとの軋轢を考えるならば、政策運営能力を備えるためには時間を要するだろう。つまり、現実的且つ効果的な経済政策を打ち出すまでには時間がかかるということであり、就任式から一定期間、市場の失望を誘うだろう。
また、トランプ次期大統領の国際貿易に関する言動にも注意が必要だろう。すぐさま中国を為替操作国に指定する可能性は低くなっている(=米中貿易戦争勃発の可能性は低い)ものの、環太平洋経済連携協定(TPP)や北米自由貿易協定(NAFTA)の即時離脱表明となれば、保護主義貿易の台頭や国際供給網の混乱が意識され米株の上値を圧迫する可能性がある。「米株高/米金利上昇/米ドル高」の理想的な関係から「米株高」のみが脱落し「米金利上昇/米ドル高」の関係となれば、それはトランプ次期政権が究極目標として掲げる米国第一主義の足枷となろう。そして米国サイドに明確な米ドル高けん制発言の動機を与えるきっかけとなり、ドル円は一時的に目先のサポートポイントである112.00レベルや111円ミドルレベルはおろか、節目の110.00すら下方ブレイクする展開が想定される(チャート②参照)。
本日のドル円とユーロドルのチャートポイントに関しては「IGテクニカル分析」を参照されたし。