Analyst's view
軟調地合いが散見されたグローバル株式だったが、昨日はアジア、欧州、米国そして新興国市場がそろって上昇。また、国際商品市況(CRB指数)も昨年6月以来となる水準(190~196ポイント)を維持する状況が継続している。これらは投資家のリスク選好度合が依然として根強いことを示唆している。
そのリスク選好をけん引しているのは、トランプ政策に対する期待であることは言うまでもない。ただ、米ドル相場と米国市場(株式 / 債券)との関係に変調が見え始めている点は要注意。チャート①では米国株式(S&P500)と米金利(10年債利回り)の動向を比較している。今月序盤にかい離が発生したものの、現在はそれが収斂されている。トランプ政策とその効果に対する米国市場の期待が根強いことの証左だろう。
一方、チャート②の米ドル相場(ドルインデックス)と10年債利回りおよびチャート③のドルインデックスとS&P500の動向を確認すると、米ドル相場が「株高 / 金利上昇」に追随できない状況となっていることがわかる。これは、米ドル相場特有のリスク要因、トランプ政権の通商政策が意識され始めていることを示唆している。これまでのトランプ相場は、トランプ政策の良いとこどりのトリプル高「株高 / 金利上昇 / 米ドル高」だった。しかし、トランプ政権の政策運営能力に対する不透明感が強まっている現状を考えるならば、今後、減税とインフラ投資(国内経済政策)は「株高 / 金利上昇」要因である一方、米通商政策(国外経済政策)は「通貨安」という、ちぐはぐな局面が散見されるだろう。もちろん、「株高 / 金利上昇」は米ドル相場のサポート要因であることから、米ドル相場が急落する可能性は低い。だが、今後はトランプ政権サイドから為替市場(米ドル高抑制)をターゲットとした言動が米ドル相場の上昇圧力を相殺しよう。事実、トランプ大統領に続き、米通商政策の司令塔である国家通商会議トップのピーター・ナバロ氏もユーロ安を批判し(英紙フィナンシャル・タイムズ)、対ドル&ユーロで上昇圧力が相殺されている。目先は日米首脳会談が「米ドル安/円高」のリスクイベントだが、4月15日には米為替報告書が公表される。それに向け中国のスタンス次第では、対中非難が米ドル安と円高リスクを高める可能性があろう。ドル円は目先、112円割れの110円トライを警戒すべきフェーズにある。