Analyst's view
直近の欧米株式動向は売り買い交錯ながらも高値圏を維持している。主要な新興国株式も年初来騰落率でプラス圏を維持。また、国際商品市況(CRB指数)も昨年6月以来の水準で推移中。リスク選好ムードが一気に後退する兆しは見えない。しかし、この動きに直近のドル円は追随できないでいる。これまでのパターンならば株高維持は円安要因だった。しかし、その相関関係が崩れている現状は、円売り圧力以上に米ドル安圧力が強いことを示唆している(チャート①参照)。その主因は、昨日のレポート「トランプ相場から脱落しつつある米ドル相場」で指摘したトランプ政権の通商政策と2月10日の日米首脳会談にあると考えられる。本来ならばトランプ政策(大規模減税、インフラ投資、国境税)は米ドル高要因である。しかし、二国間協定を軸とした通商政策は、トランプ大統領自ら「為替条項」を盛り込むスタンスを示していることからもわかるとおり(安倍首相はそぐわないと発言)、米ドル安要因である。不透明感が増している東アジア情勢と米国の庇護下にある日本の現状を考えるならば、トランプ政権は10日の日米首脳会談で、経済政策と国防(=日米同盟の負担割合)の両面で日本にプレッシャーをかけてくる可能性があろう。外為市場も来週以降、日米首脳会談を円高イベントと捉える可能性がある。ドル円は引き続きダウンサイドリスクを警戒し、目先の下値攻防分岐である112.00割れを想定したい。このレベルには厚いビッドが観測されている。112.00を割り込む展開となれば、昨年11月28日安値111.35レベル、心理的節目の110.00レベルが次の下値ターゲットとして浮上しよう。尚、後者の水準は昨年発生したトランプラリーの高安(101.20-118.66)のほぼ半値戻しの水準にあたる。
尚、本日の焦点は1月米雇用統計となろう。注目は平均賃金の動向だろう。2009年6月以来の水準まで加速している平均賃金の上昇ペースが維持される結果となれば、「賃金上昇→消費拡大→企業業績改善→成長加速」という連想を背景に米株と米金利には上昇圧力が強まろう。外為市場では米ドルを買い戻す動きが優勢となろう。ただ、上記の通りトランプ政権は自国通貨安志向を鮮明にしている。来週の日米首脳会談をターゲットに米ドル高けん制発言が度々聞かれる可能性も考えるならば、ドル円の上昇幅は限定的となろう。目先の上値ターゲットは、今年に入り相場をレジストしている21日MA(今日現在114.20前後)とこのMAに並行して展開している短期レジスタンスライン(1月3日高値118.60を起点)となろう。これらテクニカルをトライするシグナルとして注目すべきは、10日MA(今日現在113.45前後)となろう(チャート②参照)。