Analyst's view
6日に重要サポートポイント112.00を割り込んだドル円だったが、昨日は陽線示現で112円台の回復に成功。ただ、5日MAで上値がレジストされた点を考えるならば、戻りの力は弱い。5日MAの突破に成功しても、1月30日以降相場をレジストし続けている10日MAや、短期レジスタンスラインと並行している21日MAを上方ブレイクしない限り、短期的な下落トレンドの継続を想定している(チャート①参照)。
米国株式は最高値圏を維持し、欧州株や新興国株式も堅調に推移中。直近のCRB指数や原油先物相場の上値の重さは気になるものの、投資家のリスク許容度を急速に縮小させる展開とはなっていない。それでも目先、ドル円のダウンサイドリスクを警戒すべき理由は、トランプ政権の通商政策(=米ドル安政策)が本格始動していることにある。そして今後は、欧州の政治リスクにも注意する必要があろう。これから3月にかけてはリスボン条約第50条に基づく英国のEU離脱交渉が本格化する。そしてオランダでは総選挙を迎える。英国のEU離脱交渉が始まればスコットランドの動向も欧州政治リスクのひとつとして意識される可能性があろう。現時点では、フランスのそれが世界的なリスク回避圧力を強めているわけではない。しかし、政敵の失策で極右政党のフランス国民戦線が今後躍進する可能性は否定できず、また上述のリスク要因も加われば欧州株式の下落が震源となり、ひとまずグローバル株式が調整地合いへ転じる展開が想定される。欧州株に先んじてすでに外為市場では、欧州の政治リスク(フランスリスク)を背景にユーロドルは100日MAで上値がレジストされ短期サポートラインを下方ブレイクしている。一方、米ドル安の恩恵を受けたポンドドルは1.2800レベルがサポートからレジスタンスへ転換していることが明確化してきた。トランプ米政権が米ドル安志向を鮮明とする中、欧州政治リスクを背景としたユーロ安までが重なれば、最も選好されやすいのは日本円ということになろう。その点を示唆しているのが、チャート②。今年に入り、ユーロドル、ユーロポンドそしてポンドドルのパフォーマンスと比較するとユーロ円とポンド円のパフォーマンス低下が目立つ。ドル円の下落幅が鮮明となっている点も考えるならば、現在の円相場は、これまでのように世界的な株高の恩恵を享受できる相場環境ではないことをチャート②は示唆している。