Analyst's view
各市場におけるトランプ政策の仕分けが鮮明となっている。トランプ政権が掲げる主な経済政策は、①大規模減税政策(本国投資法第2弾含む)、②インフラ投資、③規制緩和(金融セクター)そして④通商政策の4つ。①~③は米国内の需要を高めることに直結する。このため米国株式市場は素直に好材料として受け止め、最高値更新のエンジンとなっている。一方④は、言い換えれば米ドル安政策である。トランプ大統領は貿易不均衡(=米国の莫大な貿易赤字)は他国の通貨安政策と資金供給にあると批判し、米ドル高を抑制することで貿易不均衡の是正を加速させていくだろう。また、通商政策の司令塔(=貿易政策を統括する組織)として新たに発足した国家通商会議(National Trade Council, NTC)を率いるピーター・ナバロ氏もトランプ大統領と歩調を合わせ、就任間もなくユーロ安批判を展開した。今年に入り徐々に上値が切り下がっているドルインデックスが示唆する通り、④は米ドル安要因として外為市場で警戒されている。その結果、昨年後半に見られた「米株高 / 米金利上昇 / 米ドル高」のトランプ相場から、米ドルのみが脱落する状況となっている(チャート①&②を参照)。
このレポートで指摘し続けている通り、現在の米ドル相場は米金利の動向がトレンド決定要因となっている。その米金利は再び米株との相関性が高まっているものの、昨日の低下が示唆する通り、株式市場ほど素直にトランプ政策を好感しているわけではない。その点はチャート③が示している。恒常的にプラス圏を維持する米株と対照的なドルインデックスとは対照的に、米金利の振れ幅は大きい。3月FOMCが重要イベントとして浮上している現状を考えるならば、米金利の急低下リスクは後退している。だが、イエレンFRBの利上げは米ドル高に直結するため、トランプ政権との軋轢が生じるリスクがある。市場がこの新たなリスク要因を意識し始めるならば、トランプ大統領によるFRB批判がそのきっかけとなろう。④の米ドル安リスクに加え、新たに「トランプ政権 vsイエレンFRB」というリスク要因も浮上すれば、ドル円の下落圧力は増すだろう。
そのドル円だが、本日は10日MAが攻防分岐となろう。レジスタンスからサポートへ転換すれば、113.00-115.00のコアレンジを形成するフェーズへシフトしよう。一方、このMAを下方ブレイクした場合は、111.60を視野に下落幅の拡大を想定したい。ユーロドルは89日MA(1.0685前後)を突破し、今月8~9日にかけて上値をレジストした1.0715レベルをトライするかが焦点となろう。下値の焦点は5日MA(1.0623前後)がレジスタンスからサポートへ転換するかが注目される。