Analyst's view
米ドル相場との相関性が高まっている米10年債利回りは上昇基調を維持。だが、市場はすでに3月利上げを織り込み済み。この点は、10年債利回りが2.50%台で抑制されるパターンから未だ抜け出せない状況が示唆している(チャート①参照)。1月下旬以降より形成されたこのパターンを打破できるか否か、それは今後の利上げペース次第だろう。FEDが想定している今年3回の利上げが順調に実施される公算が高まる条件として注視すべきは、①トランプ政策の着実な実行と②米指標データの内容となろう。6日のレポートでも指摘した通り、目先は②の方が重要視されよう。今週、注目すべき米指標データは10日の2月雇用統計だが、「質」の面、つまり賃金上昇の圧力が高まっていることが確認されれば、「賃金上昇→消費拡大→米経済の成長加速」という観測を背景に、市場では年3回の利上げ期待が強まろう。それに伴い米金利にも上昇圧力が強まることで、上述したパターンから抜け出す可能性が高まろう。そして米ドル相場は、米金利に追随し緩やかな上昇トレンドを形成しよう。
ただ、直近のドル円の動向を鑑みるに、米ドル高圧力が高まってもドル円は昨年の米国大統領選挙後のような上昇基調一辺倒となる可能性は低い。米通商政策(=米ドル安政策)リスクが立ちはだかるからだ。米国の通商政策の司令塔である国家通商会議(NTC)のナバロ委員長は6日、「日本には非関税障壁がある」と指摘し、二国間協議を通じて米国の対日赤字を是正する方針をあらためて表明してきた。また、為替操作についても厳しく対処していく姿勢を示してきた。現状、この発言に対して外為市場ではネガティブな反応は見られない。しかし、米国市場が株高と金利上昇の共存関係に回帰しつつある中でも、ドル円が115円すらトライできない状況は、上記のリスクが意識されていることを示唆している。ただ、現在はリスク回避圧力が強まるムードも見られないため、ドル円は引き続き111.60-115.00のレンジ相場を想定したい。