Analyst's view
米ドル相場との相関性が高まっている10年債利回りは2.583%と、昨年12月20日以来の水準まで上昇した。良好な雇用関連指標に反応した点を考えるならば、明日の2月雇用統計もドル円のトレンドを左右しよう。8日のレポートで指摘した通り、賃金の堅調な上昇が確認される場合、「個人消費の拡大→米経済の成長加速」という期待が強まろう。この期待は、イエレンFRBの段階的な利上げ環境も整う、という市場の期待を形成しよう。そしてドル円は、想定レンジの上限である115.00および1月19日高値115.61レベルをトライする可能性が高まろう。
ただ、米ドル高には常に通商政策リスク(=米ドル安政策リスク)が伴う。また、現在筆者が注視しているのが米株の動向だ。米株(S&P500)と米金利(米10年債利回り)の年初来パフォーマンスを比較しているチャート①を確認すると、ついに米株と米金利のパフォーマンスかい離が収斂された。だが気になるのは、米金利の急反発とは対照的に米株が続落していることだ。現時点で、グローバル市場ではリスク回避ムードが強まっているわけではない。よって現在の米株の動向は、イベント前の調整と捉えることができる。だが、米国市場における共存関係(=株高 / 金利上昇の同時発生)は、トランプ政策が土台となっている。来週13日に2018会計年度(2017年10月~2018年9月)の予算教書が米議会に提出される見通しとなっている。これを分岐点に市場は期待先行からトランプ政権の政策運営能力を見極めるフェーズへシフトしよう。予算教書提出後も具体的な経済政策とその効果についてトランプサイドが何も語らなければ、市場は上述した土台の揺らぎを意識すると同時に、イエレンFRBによる段階的な金融引き締めとそのネガティブインパクトの方に警戒心を抱くだろう。この相場環境へシフトした場合、国際商品市況では米ドル高リスクが意識され調整圧力が強まろう。外為市場では資源国通貨や新興国通貨が対米ドルで下落幅を拡大させるだろう。一方、ドル円は上記の米通商政策リスクと投資家のリスク許容度縮小が米ドル高圧力の相殺要因となり、結局はレンジ相場を維持する展開が想定される。