Analyst's view
4日のレポート「米通商政策リスクの高まりに要警戒」で指摘した通り、現在のグローバル市場は根強いリスク選好でサポートされている。この点は、昨日の海外株式と原油先物価格の動向が示唆している。
問題は、この状況にドル円が追随できていない事実だろう。チャート①を確認すると、世界株式(MSCI)のパフォーマンスとドル円のそれとのかい離が拡大傾向にあることがわかる。これまでのパターンならば、株高維持は円売り圧力を強める要因だった。事実、昨年の米大統領選挙後は、世界的なリスク選好を背景に円相場全体が円安一色となった。しかし、今年に入りその勢いは失速。特にトランプ政権がスタートして以降、円高圧力が徐々に強まっている事実を考えるならば、ドル円が株高維持に追随できない主因は、やはり米通商政策(=米ドル安政策)リスクにあろう。
ただ、問題はこれだけではない。米欧そして新興国の株式パフォーマンスと日本株(TOPIX)のそれを比較したチャート②を確認すると、3月のFOMCを境にTOPIXだけが下落幅を拡大させていることがわかる。世界の株式とは対照的に日本株への売り圧力が強まっている事実は、日本株特有のリスクが意識されていることを示唆している。そのリスクとは国内の政治リスク、つまり森友学園問題である可能性が高い。NHKの最新世論調査によれば、3月時点での内閣支持率は51%と、前回調査から7ポイント低下し、不支持は31%だった。未だ5割を超える支持率を確保してはいるものの、森友学園問題が「蟻の一穴」となる可能性は常にくすぶっている。今後の展開によっては、政治リスクを最も嫌う海外投資家がひとまず日本株から手を引く展開も考えられる。その場合、外為市場ではアベノミクス頓挫の観測を背景に円高圧力が強まろう。
本日の外為市場の焦点は、米指標データと米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の内容となろう。前者が市場予想を上回り、後者で持続的な利上げ期待を強める内容が確認されれば、ドル円は111円台へ再上昇しよう。テクニカル面では111.14前後で推移している5日MAの突破が焦点となろう。下値の焦点は110円の維持。一方、ユーロドルの上値焦点は日足基準線(1.07)、下値のそれはトランプラリー高安の50.00%戻しにあたる1.06253レベルの攻防となろう。尚、後者の水準には日足一目雲の上限が推移している。