Analyst's view
10日のドル円は陰線引け。注目すべきは、株高傾向にドル円が追随出来ない事実だろう。世界の株式(MSCI)とドル円のパフォーマンスを比較したチャート①を確認すると、見事に対照的なラインを描いている。これまでのパターンならば、低金利と流動性の両面から株高維持の局面では円が資金調達通貨として選好され、その結果「株高=円安」というトレンドが形成されてきた。また、興味深いのは、米ドル相場(=ドルインデックス)とドル円とのパフォーマンスでもかい離が広がっている点だろう(チャート②参照)。ドル円のみが株高と米ドル相場の反発に追随出来ない事実は、ドル円特有のリスク要因、つまり米通商政策(=米ドル安政策)リスクが意識されていることの証左だろう。
また、目先は上記以外にもドル円に対する特有のリスク要因、つまり北東アジアの地政学リスクを意識するフェーズにある。米空母カール・ビンソンは8日、当初予定されていた次の寄港地であるオーストラリアから急きょ朝鮮半島に向け進路を変更したことが判明。11日に北朝鮮の国会にあたる最高人民会議が開催されるタイミングでのここ数日の米軍の行動は、北東アジアの地政学リスクを市場に意識させやすい。このリスクが高まった場合、円売り圧力が強まるとの指摘が一部である。しかし、上述した資金調達通貨としての円の立場を考えるならば、リスクに直面した場合の円相場の反応はやはり円高だろう。実際、直近のシリア攻撃を含め、地政学リスクが高まった場合は円高圧力が強まる局面が多く散見されてきた。また、4月に入ってからのオプション市場で1か月物ドルプット(円コール)の需要が高まっている点も考えるならば、ドル円は引き続き110.00-112.00のコアレンジを想定しながらも、下限の110.00トライを警戒したい。一方、上値の焦点は21日MA(今日現在111.80前後)となろう。尚、111.80レベルにはオファーも観測されており、112円手前の重要レジスタンスポイントと想定したい。
一方、ユーロドルはフランス大統領選挙に対する不透明感が払しょくされない状況下では、米独利回り格差が拡大傾向となる可能性があることから下値トライを警戒したい。目先の焦点はビッドが観測されている1.0550の攻防。このレベルを下方ブレイクする展開となれば、心理的節目の1.0500を視野にさらに下落する可能性を意識したい。