Analyst's view
ドル円はビッドをこなし109円割れ。テクニカル面では200日MA(今日現在108.75前後)の攻防が焦点として浮上してきた。中東&北東アジアの地政学リスクが意識されている局面が続く間は、株式から債券、特に米債への資金シフトが続こう。それに伴いドル円の上値も圧迫されよう(チャート①参照)。
地政学リスクはしょせん一過性のリスクであり、これがメインテーマから外れれば株式市場は反発基調を強め、急低下した米金利もそれに追随する。そして外為市場では米ドルを買い戻す展開となる、というのが大方の短期予測であろう。だが、ここにきて株高に米金利が追随出来ない状況に陥る可能性が出てきた。その可能性を高めたのが、12日の米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)の報道である。この記事の中で、トランプ米大統領が志向する金融政策のスタンスが、低金利政策にあることが判明した。同時に米ドル高に対するけん制をしていること(米ドル高は最終的には害をもたらすと発言)、金融引き締めスタンスへシフトしているイエレンFRB議長の去就について明言を避けている点も考えるならば、米債券市場と外為市場は従来のトランプ政権の政策矛盾(米ドル高要因:減税 / インフラ投資 / 規制緩和 / 国境税 ⇔ 米ドル安要因:通商政策 / 金融政策)に加え、米金融政策の不透明感、つまりトランプ政権とFRBが対立する可能性も今後意識する必要性が出てきた。
トランプ発言に揺れる市場だが、外為市場では引き続き米ドル安トレンドを想定したい。目下のところドル円は、BREXITリスク時の安値(98.96)とトランプラリー時の高値(118.66)の50.00%戻しにあたる108.81レベルでかろうじてサポートされている(チャート②参照)。短期的なショートカバーを想定する場合、110.00がサポートからレジスタンスへ転換するかどうか、この点が焦点となろう。ただ、米金利への低下圧力が続く中ではレジスタンスへ転換する可能性がある。それはドル円の地合いの弱さと市場で認識され、上述した200日MAのトライは時間の問題となろう。このMAの下方ブレイクはさらなる米ドル安シグナルと市場で捉えられよう。その場合、次の焦点は、昨年6月よりレジスタンスとして意識される局面が散見された107.00レベルとなろう。尚、本日注視すべき指標データは3月の中国貿易収支となろう。予想外の黒字幅の拡大は米通商政策リスクを意識させ、その結果、円高圧力を強める要因となる可能性がある。