Analyst's view
コミー前米連邦捜査局(FBI)長官の突然の解任、そのコミー氏に対しロシアとの不透明な関係が指摘されたフリン前大統領補佐官の捜査を終えるよう求め、さらにはそのロシアに機密情報を漏洩した疑惑までが浮上する等、これでもかというほどの政治スキャンダルがトランプ大統領自身を直撃している。この影響は当然のごとくトランプ政策進行の遅れを市場に想起させる。事実、17日の米国市場(株式 / 債券)はリスク回避ムードに覆われ、その余波は米国外の株式市場と外為市場にまで及んだ。
今年前半のドル円は、トランプ政権の政策運営能力に対する不透明感が最大のリスク要因となり、「ドル安 / 円高」優勢で推移すると筆者は指摘してきた。昨日、それが再燃したことでドル円は米利上げ期待を土台とした上昇ムードが見事に挫かれた(チャート①参照)。市場心理を表すボラティティ(1か月)を確認すると、ドル円のそれはフランス大統領選挙が行われた先月24日の水準まで急拡大している(チャート②参照)。また、通貨オプション市場ではリスクリバーサル(1か月、25D)が再び低下し始めている(チャート③参照)。これら市場心理の悪化を考えるならば、ドル円は節目の110円再トライを警戒したい。そう考える理由は、政治スキャンダルだけでなく、それらが発覚したタイミングにもある。トランプ政策への不透明感が強まっている以上、米ドル高のトレンド形成は金融政策に頼らざるを得ない。米金融政策の動向はファンダメンタルズで判断するしかない。そのファンダメンタルズの状況を客観的に確認できる指標データが市場予想を下回り続けているタイミングで今回のトランプリスクが再燃したことは、米金融政策の先行き不透明感を市場に意識させよう。事実、金利先物市場から算出される6月利上げ確率は60%前後まで急低下している。直近のFEDスピーカー達の言動を考えるならば、6月利上げは未だメインシナリオである。しかし、米政治キャンダルの余波が長引けば、市場は6月以降のトランプ政権&イエレンFRBの政策シナリオに狂いが生じると、先読みするだろう。それは米株の下落要因であり、米金利の低下要因であり、そして米ドル安要因である。