Analyst's view
世界的なリスク選好ムードが続いている。欧州政治リスクの後退後、欧州や新興国株式は世界の株式パフォーマンスを凌駕する状況が続いている(チャート①参照)。米株のパフォーマンスには出遅れ感が見られるが、昨日はS&P500が過去最高値を更新する等、政治リスクに直面しながらも株高トレンドを維持している。一方、外為市場では5月上旬以降、資源&新興国通貨への買い圧力が強まっている(対ドル)。後者の状況は、国際商品市況の反発も寄与している。そして国際商品市況の反発が株式市場でのエネルギーセクターのサポート要因ともなることで、リスク選好の好循環が形成されている。
この循環に追随出来ないのが、米ドルである。チャート②を確認すると、米株(S&P500)とのパフォーマンスかい離が鮮明となっている。株高は米金利に対する低下圧力の後退要因となっているにもかかわらず、米ドル売り圧力が継続する理由は、①米政策リスク、②欧州政治の後退とユーロ買い、③6月米利上げ確率の織り込みと考えられる。①は通商政策リスクの他、米政治の停滞に伴うトランプ政策の頓挫リスクも含み、米ドル特有のリスク要因として今後も意識されるだろう。②はドラギECBによる政策変更への思惑へとつながる。14日の州議会選挙でドイツの政治リスクも後退したことで、ECBは現状の金融緩和政策を変更するシグナルを強めてくる可能性があろう。これは対ドルでのさらなるユーロ高材料となり得る。そして③は、80%前後まで6月利上げ確率が織り込まれている状況では、もはや米金利と米ドルの上昇材料としての鮮度を失っている。これら要因が絡み合い、現在の米ドル安トレンドが形成されていると思われる。①のリスクがくするぶり続ける以上、米ドル相場反発のきっかけは米金利にあろう。昨日のFOMC議事録の内容を鑑みるならば、その米金利は指標データによりトレンドが左右されよう。ドル円に関しては、上述した好循環が米ドル安圧力の相殺要因となることで、110円を一気に割り込む可能性は低下している。ただ、①のリスク要因と②のユーロ高が上値を圧迫する状況も継続しよう。引き続き110.00-112.80をコアレンジと想定したい。