Analyst's view
2017年に入り米長期金利は低下基調にある。要因は米国の政治と経済の両方にあろう。前者の要因は言うまでもなくトランプ政策に対する期待が、政治の混乱により後退していることである。この点は、ロシア疑惑をめぐるモラー特別検察官の捜査次第でさらに米金利の低下要因もしくは抑制要因となる可能性がある。だが現在、より注視すべきは後者の方だろう。2017年に入り米国のインフレは低下傾向にある(チャート①参照)。特にコアCPIにいたってはFEDが利上げのタイミングを見計らっていた2015年半ばの水準まで急低下している。インフレ低下に歩調を合わせるように米10年債利回りも低下している。この状況を克服するには、20日のレポート「FOMC前に進行した米ドル安の調整相場を想定」で指摘したとおり賃金の上昇が必須となろう。この点については6月雇用統計まで待つ必要がある。
賃金動向以外で米インフレ動向に影響を与えるもうひとつの要因として注視すべきは、原油先物相場だろう。上述のとおり20日のNY原油先物7月限は大幅続落となり、一時は42ドル台へ突っ込む局面が見られた(チャート②参照)。この水準は、昨年11月の米大統領選の結果を受け、米ドルが急伸した際に付けた安値水準である。産油国間における減産とその期間延長にもかかわらず、国際エネルギー機関(IEA)は14日に公表した月報で、米国等の増産を理由に2018年にかけて需給の緩みを指摘した。5月のOPEC月報で5か国が増産していたこと、そして6月2日時点で米国内の石油掘削機(リグ)稼働数が22週連続で増加している事実も考えるならば、現在のところIEAの指摘は示唆に富む。原油安がさらに進行すれば、エネルギーセクターの下落要因ともなろう。現在の外為市場では米ドル安の調整相場となっているが、原油安が水を差す可能性が出てきた。
本日のドル円だが、111.80レベルの日足雲の下限が上値の焦点となろう。下値のそれは111円台の維持となろう。一方、ユーロドルは、21日MAと日足転換線が推移している1.1205レベルを上値の攻防分岐、1.1100を下値の攻防分岐と想定したい。