Analyst's view
目下のところ米金利は、欧州金利に追随して反発基調へ転じている。米ドル相場と相関性の高い10年債利回りは2.297%と、5月24日以来となる水準まで急反発中。その結果、日米10年債利回りの格差が拡大している。本来であれば金利差の拡大はドル円のサポート要因となる。ただ、それは株式動向次第と言えよう。
今回の金利反発局面で注視すべきは、株式動向となろう。イエレンFRBに続き、ドラギECBとカーニーBOEも出口戦略を模索し始めたとなれば、これまで株式市場に流入していた資金が細ることは確実。昨年の米大統領選挙時には、株高と金利上昇という共存関係が成立していた。これはトランプ政策への期待が土台となって発生した現象だった。しかし現在は、その政策に対する期待が完全に後退中。また、共存関係を構築する新たな土台が見当たらない中での金利反発は、株安要因として作用する可能性がある。特に注視すべきは米株と欧州株の動向だろう。29日の米株は、主要3市場がそろって下落した。注視すべきは、これまで株高のけん引役だったハイテクセクターへ売り圧力が強まっていることだ。上述のとおりナスダック総合指数は約1か月ぶりの安値水準まで下落。また、ナスダック100とS&P500のボラティリティを比較すると、前者の上昇幅が拡大していることがわかる(チャート①)。過去のリスクイベント時のボラティリティと比較すればまだ低水準ではあるが、フランスリスクが意識された水準はすでに上抜け、且つS&P500とのかい離が広がっている事実は、ハイテクセクターに対する警戒感の高まりを示唆している。7月4日の米独立記念日や四半期決算を控えているタイミングも考えるならば、ハイテクセクターが米高調整のけん引役となる可能性があろう。
また、欧州株のボラティリティも拡大傾向にある(チャート②)。ドラギ発言後にボラティリティの拡大が始まった点を考えるならば、欧州金利の急反発がネガティブ要因として意識されていることは明白。欧米株式の下落幅がさらに拡大すれば、米金利の反発圧力の相殺要因となろう。結果、株安がドル円の上値を抑制する材料となる可能性がある。