Analyst's view
6月米雇用統計は、失業率こそ4.4%へ上昇したものの、非農業部門雇用者数が22.2万人増と市場予想(18.0万人)を上回る内容となった。また、前月(13.8万人→15.2万人)および前々月(17.4万人→20.7万人)が上方修正された。完全雇用の状態にあって尚、20万人以上の雇用増を維持したことで米国市場は「株高 / 金利上昇」のリスク選好で素直に反応した。
現在のグローバル市場は①株高の維持、②金利上昇が同時に発生する局面が見られ、且つ③金融緩和からの脱却までが意識されている状況となっている。これら3つの要因は、すべて円安トレンドを形成するものである。事実、ドル円は完全に5月の戻り高値114.37レベルを視野に入れる展開となった。クロス円でも、ユーロ円が昨年2月以来となる節目の130円台に到達すれば、リスク性の高い資源国&新興国通貨も6月下旬以降、対円で上昇ムードを強めている。
円安トレンド持続の材料として今週注目すべきは、米指標データとなろう。特に注目されるのが、14日に発表される6月小売売上高と消費者物価指数だろう。確かに雇用は堅調である。しかし、賃金の伸びは前月比で0.2%増と市場予想の0.3%増を下回り、且つ前年同月比でも2.5%増と抑制された状況が確認された。7日の米ドル相場の上昇幅が限定的だった理由は、この点にあると筆者は考えている。よって、上述した指標が賃金の伸びが抑制されている影響から総じて市場予想を下回るならば、米ドル安要因となろう。一方、賃金の伸びが抑制されて尚、個人消費の伸びとインフレ鈍化圧力の低下が確認されるならば、リスク選好を背景とした円安トレンドが加速しよう。また、今週はFEDスピーカーによる証言 / 講演が予定されている。最も注目すべきは12日に上院銀行委員会で証言予定のイエレン発言となろう。6月FOMCの内容を踏襲するならば市場へのインパクトは限られよう。一方、未だFED内でコンセンサスが形成されていないバランスシート縮小のタイミングについて、イエレン議長自ら年内実施に言及すれば「米金利上昇→米ドル高」の展開が想定される。
ドル円の上値攻防分岐は①114.37、②115.00、③115.51の3つを想定。一方、下値の焦点は112円台の維持となろう。