Analyst's view
2017年以降、米10年債利回りはトランプ政策に対する思惑と連動する局面が散見されてきた。先週18日にオバマケアの代替法案が頓挫したことで、再びトランプ政策に対する不透明感が台頭。インフレ鈍化懸念も合わさり米10年債利回りは21日、一時2.23%を割り込む局面が見られた。米金利の低下が米ドル安要因であることは、このレポートで何度も指摘済み。事実、ドルインデックスは3月以降の米金利に歩調を合わせ94.00割れの展開となれば、フランスリスクが後退した4月24日以降、米独利回り格差の縮小を背景に対ユーロでは約6.9%も米ドル安が進行している。一方、ドル円は108.00-115.00のレンジで売り買いが交錯しているが、米金利が持続的な上昇トレンドを形成しない限り、110円割れリスクが常に伴うだろう。その米金利が再び上昇基調へ転じるには、良好な指標データが必要条件である。この観点で今週は、28日のQ2GDP速報値が市場の耳目を集めよう。特に注目されるのが、米経済のエンジンである個人消費である。Q1GDP減速の要因となった個人消費が引き続き低調な内容となれば、インフレ鈍化は今後も続くと市場は捉えよう。そして、米金利の低空飛行と米ドル安の状況が継続しよう。ドル円は緩やかに下値トライの展開となるだろう。
米指標データと同様、今週注視すべきは欧州株式の動向である。米金利が低下してもドル円が上記のレンジ(108.00-115.00)で売り買いが交錯している背景にあるのは、世界的な株高トレンドが米金利低下に伴う米ドル安圧力を相殺していることにある。しかし、直近の欧州株式は続落中。ECB理事会後に上値が重くなっている点を考えるならば、今週は①緩和マネー縮小に対する懸念、②欧州金利の上昇懸念、③ユーロ高という3つの要因が欧州株の調整トリガーとなる可能性がある。欧州株が崩れれば、そのネガティブインパクトは米株にも波及しよう。シカゴ通貨先物市場における投機筋の円ショートが約12.6万枚の水準まで積み上がっている点を考えるならば、欧米株式の下落は投機筋にとって絶好の円買い機会となろう(チャート①参照)。また、米金利への低下圧力もさらに強まることで、ドル円は一気に110円ブレイクを目指す可能性すらある。逆に良好な米指標データ&株高維持となれば、ドル円は日足一目雲でサポートされる展開を想定したい(チャート②参照)。
一方、ユーロドルは、リスクリバーサルに大きな変動が見られない点を考えるならば、底堅い展開が想定される。だがユーロ高は株安要因であると同時に、デフレ懸念の再燃材料でもある。テクニカル面では標準誤差回帰分析バンドの上限を突っかける展開となっている。これらの状況を考える場合、常に調整局面を意識したい。目先はオファーが観測されている1.17前後での反落を警戒したい(チャート③)。