Analyst's view
4-6月期(Q2)の米GDP速報値は、市場予想の2.6%増と一致。けん引役は2.8%増へ急回復した個人消費だった。この内容に対して外為市場は米ドル安で反応。雇用コスト指数の鈍化が米ドル売り圧力を強めた、との指摘がある。だが、個人消費がQ1の1.1%増から急回復している点を考えるならば、むしろ米ドル高で反応してもおかしくなかった。しかし、そうはならなかった事実に、米ドル安継続の可能性があると考えられる。
米ドル安の要因は、米長期金利(10年債利回り)の低下にある。7月に10年債利回りが低下したタイミングを確認すると、①6月米雇用統計後と②7月FOMC後である(チャート参照)。これらに共通するのは、イエレンFRB(FED)の金融引き締めペースに対して不透明感が強まった点である。上述のとおり、直近3か月間の平均賃金は前年同月比で2.5%増と抑制状態。この状況が続く限り「個人消費の拡大→企業活動の活発化→景気拡大→インフレ(期待)の上昇」の好循環と利上げペース維持に対する期待を市場が抱くことは難しいだろう。また、7月FOMCではバランスシートの縮小を急ぐスタンスを鮮明にしたことで、利上げペースに対する不透明感がまた強まった。
これを払しょくするためには、良好な指標データが求められる。この観点で、今週は7月雇用統計が最大の焦点となろう。特に注目されるのが賃金動向である。引き続き抑制された状況が確認されるならば「米金利低下→米ドル安」が継続する展開を想定したい。ドル円は110円トライを警戒したい。株式動向次第では110円以下の攻防となる可能性があろう。一方、賃金の堅調な伸びが確認されるならば、逆の展開を想定したい。だが、良好な雇用統計のみをもって米金利が反発基調を維持することはないだろう。そのためには、CPIや小売売上高といった重要指標データも逐一見極める必要があろう。また、内部対立が激化するトランプ政権の動向が良好な指標データの相殺要因となる可能性がある。この点については次回以降のレポートにて。