Analyst's view
「米ドル安圧力>円安圧力」を背景にドル円は、7月11日高値114.50を起点とした短期レジスタンスラインで上値がレジスト状態となっている(チャート①参照)。この状況を作り出している主因は、米長期金利の低下にある。ドル円と日米10年債利回り格差の動向を比較したチャート②を確認すると、金利動向とドル円の密接な関係が見て取れる。米金利低下の要因は、①インフレ鈍化のトレンド化と②トランプリスクに集約される。未だ混乱状態の人事とロバート・モラー特別検察官による「ロシア疑惑」追求という内憂外患に陥っているトランプ政権の現状を考えるならば、②は今後も米金利の低下と米ドル売りの圧力を強める要因として意識されよう。
一方、①は今後の指標データ次第で市場の思惑が揺れるだろう。インフレ鈍化に対する懸念を払しょくする指標データとして、本日は7月米雇用統計が焦点となろう。注視すべきは賃金動向である(予想:前月比0.3%増 / 前回:同0.2%増)。賃金の伸びが加速するならば「個人消費拡大→成長加速→インフレ(期待)上昇→持続的な金融引き締め」という思惑を背景に米国市場は素直に「株高 / 金利上昇」で反応しよう。この場合、ドル円は上述した短期レジスタンスラインのトライもしくは突破を想定したい。逆に賃金の伸びが持続的な抑制状況にあることが確認されるならば、雇用者数の増加や失業率の低下となっても米金利と米ドルの上昇は限られよう。株式動向次第でドル円は、109円台の攻防へシフトする可能性も想定したい。一方、ユーロドルだが、米賃金の伸びが確認される場合、「ユーロ高/米ドル安」の調整材料とされよう。だが、通貨オプション市場では、ユーロのコールオーバーとなっている。調整は1.20トライの土台作りと想定したい。調整相場の際の下値焦点は、6月26日以降、サポートラインとして機能している10日MAの維持となろう(チャート③参照)。