Analyst's view
ドル円の「米ドル安 vs 円安」の綱引きトレンドは継続中。だが、良好な雇用関連指標の内容を受けて尚、米金利の上昇が限定的である事実を考えるならば、インフレ鈍化とそれに伴う米利上げペースへの不透明感は相当根強いことがうかがえる。「米金利の低下=米ドル安」が続く限り、ドル円は上値の重い状況が継続しよう。
しかし、今年3度目の108円台突入を阻んでいるのが、世界的な株高である。この状況が続く限り、円を売る動きが継続し、ドル円のサポート要因(=米ドル安の相殺要因)となろう。
欧米株式のインプライドボラティリティを確認すると、ともに低下基調にある(チャート①参照)。米株高のけん引役となっているハイテク株の動向を反映するナスダック100は7月上旬を境に低下基調へ転じ、欧州株(STOXX50)は今年最低水準まで低下中。これらの状況を考えるならば、目先株式市場が急落するムードは感じられない。昨日のように単発の調整相場が発生すれば米ドル安圧力と合わさり、ドル円は下値トライの展開となろう。しかし、株式市場でリスク回避のムードが強まらない限り、ドル円が108円台を一気に目指す可能性は低いだろう。米ドル安のみの下落ならば、現時点での今年最安値108.13を起点とした短期サポートライン(今日現在109.50前後)は維持する可能性がある。逆にこのラインを下方ブレイクする展開は、株式市場での深い調整、もしくはリスク回避のムードが一時的に強まっている可能性が高い(チャート②参照)。
一方、ユーロドルだが、昨日は陰線の示現により6月26日以降相場をサポートし続けてきた10日MAを下方ブレイクした。また、オシレーター系ではADXが低下基調を鮮明にし、RSIも75→60へ低下中。テクニカル面ではユーロ高の調整シグナルが点灯している。だが、リスクリバーサルに大きな変動が見られないことから、ユーロが急落する可能性は低い。まずは、1.1610レベルで推移している日足基準線まで調整が進行するかどうかを見極めたい(チャート③参照)。