Analyst's view
第一は、米ドル相場との相関性が高い10年債利回りの調整(=反発)である。現状、今年最低水準である2.103%を再び視野に入れる状況となっている。7月以降、低下し続けてきた経緯を考えるならば、短期的に米債ロングの持ち高調整の圧力が強まる可能性がある。米金利が反発すれば、米ドル相場でも調整(=米ドルのショートカバー)圧力が強まろう。米債市場での調整圧力を強める要因として注視すべきは、米株高の維持と良好な指標データとなろう。
次に注視すべきは、ユーロ相場の動向である。この点を見極める上で重要な材料は、米ワイオミング州のジャクソンホールで開催される経済シンポジウム(24日~26日)でのドラギ発言である。現行の金融緩和政策の変更について具体的な言及があれば、「ユーロ高/米ドル安」の圧力が再び強まる可能性がある。だがECB議事録では、急速に進行したユーロ高のネガティブインパクトと金融政策の変更に付随するリスクについてメンバーが認識していることが判明。また、ドラギ総裁は今回の会合では金融政策に言及しない、との一部報道もある。報道通りならばユーロ高の調整が続くことで、米ドルを買い戻す動きが強まろう。だが、Summaryで述べた米ドルを取り巻く状況を考えるならば、そのまま米ドル高トレンドへ転換する可能性は低いだろう。むしろ調整色の濃いレンジ相場へシフトする展開を想定したい。現時点での想定レンジの下限は、ビッドが観測されている1.1600レベル。テクニカル面では、直近高値1.1910からの38.20%戻しにあたる。一方、上値の攻防分岐は、短期レジスタンスラインとなろう。このラインの突破は、1.19再トライのシグナルと想定したい(チャート①参照)。
最後の材料として注視すべきは、トランプ政権のキーマン達と対立を深めていたスティーブ・バノン首席戦略官・上級顧問の解任が与える影響である。18日の外為市場ではこれを「政権の仕切り直し」と好感し、ひとまず米ドルの買戻しで反応。しかし、バノン氏の解任劇に対しては、トランプ氏を支持してきた勢力から非難する声が聞かれる。よって、米ドル相場の反発材料となるかどうかは、今後のトランプ政権の支持率と各市場の相関性、特に米金利の反発の鍵を握る米株の反応を注視する必要がある。今回の解任劇がトランプ政権をさらに迷走させることになれば、①米政治の混迷=米金利低下、②国内の批判をそらすための通商交渉の加速=米ドル安、という展開が今後加速する可能性がある。
最後にドル円だが、今週のコアレンジは108.00-111.00を想定。株高の維持や良好な米指標データを背景に米金利が反発すれば、上限トライとなろう。21日MAの上方ブレイクを111.00トライのシグナルと想定したい。逆にバノン解任劇が米国市場でのリスク回避要因となれば、米金利の低下と株安のダブルパンチにより、上述した108円ブレイクの展開が想定される。108.00にはビッド、下にはストップの観測あり(チャート②参照)。