Analyst's view
トランプ大統領誕生後、反発基調にあった米金利だが、27日は市場予想を下回った米GDP速報値を受け低下。米ドル相場の上昇圧力も相殺された。米金利と米ドル相場の高い相関性を考えるならば、ドル円やユーロドルのトレンドを見極める上で重要なファクターは引き続き米金利となろう。その米金利だが、今週は米指標データと米連邦公開市場委員会(FOMC)の内容で上下に振れる展開が想定される。前者で注視すべきはやはり2月3日発表の1月雇用統計となろう。市場予想(非農業部門雇用者数変化:17.1万人、失業率:4.7%、前月比平均賃金:0.3%)以上ならばFEDが想定している年3回利上げへの思惑が強まろう。特に注視すべきは平均賃金の上昇率だろう。完全雇用の状況に限りなく近い現在の労働市場を考えるならば、今後市場が注目するのは労働市場の量ではなく質、つまり個人消費のエンジンとなる賃金の上昇の方である。すでに平均賃金は2009年6月以来の水準まで加速している。この状況を維持する内容が確認されれば、FEDが想定している年3回利上げへの思惑が強まり(市場予想は現在のところ年2回利上げの予想)、日米および米欧金利差が再び拡大傾向へ転じよう。逆に冴えない内容となれば、トランプ政策への思惑が交錯していることもあり、素直に金利低下で反応しよう。この場合、外為市場では米ドル安の展開が想定される。
米指標データ以外で注視すべきもうひとつの金利変動要因は、FOMCとなろう。政策は維持される見通しとなっている。焦点はFOMC声明となろう。景気、雇用そしてインフレの見通しについての見解が注目される。為替市場(ドル高)についての言及があるかどうかも注視したい。
ドル円の焦点は、レジスタンスラインとして意識されている日足の一目基準線の攻防となろう(チャート②参照)。良好な指標データとタカ派のFOMC声明となれば、このテクニカルを突破する展開を想定。ただ、これらイベントで米ドル安圧力が強まっても、最高値圏を維持する米株、堅調な国際商品市況と新興国市場の動向を考えるならば、112.50レベルは維持する公算が高い。
ドル円の112円割れのリスク要因は、トランプ政権の通商政策だろう。2月10日にワシントンで日米首脳会談の開催が予定されているが、これに向けて、米国サイドが日米の貿易不均衡是正のプレッシャーを日本サイドにかけてくるならば、円高が圧力が強まろう。また、中国との貿易不均衡是正発言も同様に円高要因として警戒しておきたい。
尚、米国以外で注視すべき指標データは、31日のユーロ圏の10-12月期域内総生産(速報値)と1月 消費者物価指数(速報値)、2月1日の中国の1月 製造業購買担当者景気指数および3日の1月 CAIXIN製造業購買担当者景気指数。また、中銀イベントで注視すべきは31日の日銀金融政策決定会合と黒田総裁の記者会見、および2月2日のイングランド銀行(BoE)の金融政策イベントとなろう。