Analyst's view
ドル円はついに112.00割れ。短期レジスタンスラインの形成と112.00レベルの維持が続いたことから、チャート上ではディセンディング・トライアングルのパターン形成となっており、さらなる下落リスクが高まってきた(チャート①参照)。
なぜ、これまで強固だった112.00が大陰線の示現によりあっさりと破られたのか。トランプ政権の通商政策が米ドル安を志向していることがその主因であることは間違いない。だが、クロス円までが総じて下落している点を考えるならば、やはり円高圧力が徐々に強まっていることも一因だろう。では、なぜ円高圧力がここにきて急に強まってきたのか。フランス大統領選の先行き不透明感が強まっていることもリスク回避の円高要因ではある。しかし、月初より円相場全体が下落トレンド(円高優勢)へ転換している事実を考えるならば、それはこのレポートで再三指摘してきた日米首脳会談が円高イベントとして外為市場で警戒されているからだろう。米ドル相場だけがトランプラリーから取り残されている状況で、日米首脳会談が円高圧力を強めるならば、ドル円は週足一目/雲の上限を下方ブレイクする展開が想定される。それは心理的節目であり且つトランプラリーの高安の50.00%戻しの水準でもある110.00トライのシグナルとなろう。トランプ政権の保護主義が一時的に米株の上値を圧迫する要因にもなり得る事実(=大統領令による入国規制が嫌気され1月30日の米株が売りで反応した事実)も考えるならば、110円トライのシナリオは常に想定しておきたい。
チャート分析の観点で上記のサポートポイントをトライするシグナルとして注視すべきは、112.00レベルがサポートからレジスタンスへ転換するかどうか、この点にあろう。大陰線の示現による112.00下方ブレイクと昨日のNY市場での反発の弱さを考えるならば、その可能性は高まっている。また、クロス円ではユーロ円の動向に注目したい。欧州の政治リスクが意識されやすいフェーズへ突入している点を考えるならば、ドル円とともに円高をけん引する可能性があるからだ。昨日は、昨年12月5日以来となる120.00割れの局面が見られた。テクニカル面ではトランプラリーの高安38.20%戻し(120.13)を下方ブレイクしている。また、日足遅行線によるローソク足の下離れやDMIのかい離とADXの上昇も考えるならば、次のターゲットである119.50-45レベル(昨年11月30日おより12月5日の安値レベル)やその下の水準で推移している89日MAを下方ブレイクする展開を警戒したい(チャート②参照)。