Analyst's view
まずは28日の議会演説
24日のダウ平均は続伸。1987年以来実に30年ぶりとなる11日連騰となった。一見すると、株高維持はトランプ相場が未だ継続していることを示唆しているように見える。しかし、今年に入りその相場状況が刻々と変化していることはこのレポートで指摘済み。第1の変化は、米ドルがトランプ相場から脱落していることだ。トランプ政権の通商政策リスク(=米ドル安政策リスク)が外為市場で意識されていることが主因であることは言うまでもない。ただ、米ドル安圧力強めているのはこの通商政策リスクだけではない。米ドル相場のトレンド決定要因となっている米金利もトランプ相場から脱落しつつある事実が、今年に入り米ドル安圧力を強める要因となっている(チャート①参照)。事実、米ドル相場との相関性が高い10年債利回りは今年に入ると上下に振れる不安定な動きとなり、24日には2.31%と今年最低水準(2.305%)まで低下した。イエレンFRB議長の議会証言(14日)で市場は3月利上げの可能性を再び意識せざるを得ない状況にあるにもかかわらず、米金利への低下圧力が強まっている事実は、債券市場が株式市場程、トランプ政策の実現性とその効果を純粋に信じているわけではないことを示唆している。また、継続的な利上げはトランプ政権の米ドル安政策と真っ向から対峙する点も懸念材料として意識されている可能性もあろう。
現時点で注視すべきは前者のトランプ政策の実現性、特に約30年ぶりとなる大規模税制改革の実現性である。この点を探るべく市場は、28日のトランプ大統領による議会演説に注目するだろう。ただ、閣僚人事で未だゴタゴタが続いているトランプ政権の現状を考えると、28日までに公の場で発表出来るレベルまでの中身をまとめ上げることは不可能だろう。出来たとしてもその実現性に疑問符が付くならば、米国株式で失望感が広がり調整相場へ転換する可能性が高まろう。また、何とか議会演説を通過しても、「2-3週間以内」の発表期限を迎える今週に何ら減税政策の中身に言及しなければ、こちらも株式市場の調整圧力を強める要因となろう。
ドル円は111.60トライ
上述したとおり、米金利はトランプ相場から脱落しかかっている。この状況下での米ドル反発の要因となり得る材料は、①良好な指標データと②FEDスピーカーによる3月利上げに向けた地ならし発言しかないだろう。本日は米耐久財受注(①の要因)と中立派と目されるカプラン・ダラス連銀総裁の講演(②の要因)が予定されている。内容次第で米金利と米ドルのトレンドを左右する可能性がある。ただ、通商政策リスク(=米ドル安政策リスク)に直面し、且つその政策を推し進めているトランプ大統領の議会演説を翌日に控えていることを考えるならば、米ドル相場が反発しても上値は限定的だろう。その議会演説がリスクイベントである点も考えるならば、ドル円は想定レンジの下限である111.60レベルをトライする可能性の方が高いと想定している。