Analyst's view
22日のNY原油先物7月限は反発。ただ、終値が前日比0.21ドル高の1バレル=42.74ドルと小幅だった事実を考えるならば、プットオプションが集中している40ドルをトライする可能性は未だ残る。OPECの減産効果を打ち消している主因は、米国の生産増にある。本日は米石油サービス大手のベーカー・ヒューズが週間の米原油掘削装置(リグ)の稼働数を発表する予定となっている。過去2年間で最高水準となっている稼働数の増加傾向が続けば、供給過剰懸念を背景にNY原油先物7月限は反落する可能性があろう。その場合、警戒すべきポイントは2つ。ひとつは米金利の反応である。21日のレポート「米金利と原油先物相場」で指摘したとおり、2017年に入り米インフレ指標は低下基調を辿っている。それに連動し、米ドル相場との相関性が高い10年債利回りも低下基調にある。様々な要因が絡み合いインフレが低下していると考えられるが、根本的な要因は抑制された賃金の伸びにあろう。賃金が上昇しなければ、米国経済のエンジンである個人消費の拡大が見込めず、結果としてインフレ(期待)も上昇しないからだ。このような状況で原油価格が再び下値トライとなれば、インフレ鈍化懸念を背景に米金利への低下圧力が強まろう。それはドル相場の押し下げ要因となり、ドル円も下値トライが想定される(チャート①参照)。
もうひとつ注視すべきポイントは、米株への影響だろう。直近の米株は、原油安の影響を受けエネルギーセクターに売り圧力がかかりやすい状況となっている。そして金利の低下と金融政策の先行き不透明感を増すであろう「原油安/株安」は、金融セクターの下落要因としても作用する。これらセクターを中心に米株の調整が加速すれば、外為市場では円を買い戻す圧力が強まろう。現状、米ドル安のみの影響しか受けていないドル円だが、「株安=円高」の影響が合わされば下落幅が拡大しよう。通貨オプション市場ではプットオーバーが散見され、リスクリバーサル(1か月、25D)が低下基調へ転じ始めている。テクニカル面では、日足一目雲が強烈なレジスタンスとして意識されている。株式動向次第で三度の110円割れの可能性が高まろう。尚、本日は5月の新築住宅販売件数が発表される。内容次第で米株&米金利の変動要因として注視したい。