Analyst's view
比較チャート①を確認すると、昨年11月の米大統領選挙後に形成された米株と米金利の強固な順相関の関係に変調の兆しが見え始めている。米ドル相場上昇の土台となってきたのは米金利の上昇だった点を考えるならば、外為市場のトレンドを見極めうる上で目先注視すべきは、米国債券市場の動向となろう。
その米国債券市場では、昨年12月下旬以降、調整相場(=米金利の低下傾向)のムードを強めている。トランプ政策への期待先行が金利急騰の土台となった点を考えるならば、11日のトランプ次期大統領による記者会見は米国債券市場の動向を左右する重要イベントである。具体的かつ実現可能な経済政策のビジョンを示すことが出来れば「トランプラリー」継続を背景に、米国債券市場での調整相場は終わるだろう。米金利に再び上昇圧力が強まれば、米ドル相場も反発しよう。
一方、市場に「トランプリスク」を意識させる発言をするならば、米国債券市場の調整と米ドル相場の下落局面は継続するだろう。個人的に注目しているのは、強硬な対中政策への言及の有無である。トランプ次期大統領は、ロシアへ関係改善の秋波を送る一方、中国をけん制する発言や親台湾派を閣僚に採用する人事を行っている。政治&経済の両面で強硬な姿勢を示すようならば、東アジア地域におけるプレゼンス維持のための軍事費増大による財政赤字拡大の懸念や米経済への先行き不透明感が意識され、米国債券市場での調整相場を促す可能性がある。また、人民元安へのけん制発言があれば、米ドル安圧力を強めよう。
「トランプリスク」が意識された場合、注目すべきはユーロドルの動向である。比較チャート②を確認すると、米独金利差の動向とユーロドルが見事な逆相関の関係を描いていることがわかる。今後、ブレクジットリスクが意識される局面へシフトすることも考えるならば、ユーロポンドでの上昇がユーロドルをサポートする可能性もあろう。目先は、今月5日以降、レジスタンスラインとして意識されている一目基準線(今日現在1.0606前後)の突破が焦点だが、トランプリスクとブレクジットリスクが重なれば、ネックラインとして意識されている1.0850レベルまでの反発もあり得よう。