Market Analysis
ユーロ売りトレンドを形成する可能性があったドイツの政治リスクは、キリスト教民主・社会同盟(CDS・CSU)とドイツ社会民主党(SPD)との連立合意により後退した。このタイミングで今週はECBイベントが開催される。先月26日の欧州議会証言でドラギ総裁はあらためて金融緩和の継続を示唆した。議会証言と直近のインフレ鈍化を考えるならば、フォワードガイダンスの変更に関する討議はしても、実際に変更してくる可能性は低いだろう。また、8日の記者会見では議会証言の内容を踏襲する可能性が高い。ECBイベントがハト派と市場で受け止められる場合、ユーロドルには調整売り圧力が再び強まる可能性がある。だが①ドイツの政治リスク後退、②堅調な域内のファンダメンタルズ、③米政治リスクを背景とした米ドル安という相場環境を考えるならば、ECBイベントでユーロ売り圧力が強まっても、すぐに終息する可能性が高いだろう。短期から中期にかけてリスクリバーサルがユーロ高を示唆している現状は、ユーロ高回帰の可能性を示唆している(チャート①)。テクニカル面でも10日&21日MAを上方ブレイクし、ユーロ高の加速シグナルが点灯している(チャート②)。
ユーロドルの反発圧力を強めるもうひとつの要因として注視すべきは、トランプ政権による輸入制限の発動だろう。すでにEUは報復を示唆し、メキシコはロバータ・ジェイコブソン駐メキシコ米大使が辞任する事態に発展している。輸入制限が実施されるならば、外為市場では米政治リスクを背景にユーロドルが上値トライとなろう。対ユーロでの米ドル安加速は世界的なドル安売りを誘発しよう。ドル円は105.00割れを警戒したい。2018年の下落は米ドル安が軸になっていることに加え、米通商政策リスクが株式市場のボラティリティを高めるからである。株高と円安の相関性は崩れているが、株安と円高の相関性は未だ健在である。「米輸入制限発動→世界的な報復合戦→貿易摩擦」に対する懸念が強まるならば、米株をはじめとした株式市場のボラティリティは拡大しよう。それに伴い米ドル安圧力と円高圧力の高まりが合わされば、ドル円は105円を割り込む展開となろう(チャート③)。
【チャート①:ユーロドル
リスクリバーサル】