Analyst's view
9月米雇用統計で平均賃金(前年同月比)の伸びが2.9%と加速していることが確認された(チャート①参照)。低賃金のLeisure and hospitalityセクターにおける雇用者数の減少(=11.1万人減)というイレギュラー要因を考慮する必要はあるが、雇用統計後の市場のファーストリアクションを鑑みるに、平均賃金の加速は、将来の個人消費拡大とそれに伴うインフレ低下からの脱却期待が市場で高まったことを示唆している。今週、この期待をつなぎとめる材料として注視すべきは、13日に発表される米指標データとなろう。特に注目されるのが9月CPIコア指数となろう。FEDが注視する8月PCEコア指数(前年同月比)は1.3%と、インフレの鈍化傾向が続いていることを示唆する内容だった。一方、CPIコア指数は1.7%(同)と、5月以降横ばい推移が続いている。9月コア指数の市場予想は1.8%。予想以上ならば、米ドル相場と相関性が高い10年債利回りは反発基調を維持しよう。外為市場では米ドル相場の堅調地合いが想定される。この場合、ドル円は114円台を視野に上値トライを想定したい。逆に横ばい推移以下の状況が確認されるならば、米金利の反発圧力を削ぐ展開が想定される。このケースではドル円の上値が抑制されるだろう。しかし、株高維持の状況を考えるならば下落幅は限定的となろう。日足一目雲の上限で反転する展開を想定したい。
今週注視すべきもうひとつの焦点は、北東アジアの地政学リスクである。13日の米指標データ発表まで米ドル相場は売り買い交錯の展開が想定される。しかし、このリスク要因が再燃する場合は「株安→米金利低下→米ドル売り+円買い」を警戒したい。北朝鮮は10日に朝鮮労働党の創建記念日を迎える。この日、もしくはそれ以降に北朝鮮が米国サイドを刺激する行動に出れば、株式市場には下落圧力が強まろう。マティス米国防長官の現実路線を目指す言動を鑑みるに、米軍が軍事行動を起こす可能性は現時点で低い。だが米国民の58%が軍事行動を支持し、且つ共和党支持者の容認派は前回調査の59%から82%に急上昇している(米世論調査会社ギャラップ)。また、「嵐の前の静けさ」発言等、トランプ氏の言動に軍事行動をちらつかせる内容が多いことも考えるならば、北東アジアの地政学リスクの再燃は世界の株式市場の下落要因として警戒しておきたい。この場合、ドル円は日足一目雲上限を下方ブレイクし、日足基準線と視野に下落幅が拡大する可能性がある。だが、米軍が実際に軍事行動に踏み切らない限り、これまでと同じくリスク回避相場は一過性の現象にとどまり、ドル円の新たな押し目買いのチャンスを市場に与えることになろう。