Analyst's view
ドラギ総裁は27日、ユーロ圏の物価についてデフレからリフレに変わったと発言。量的緩和にまで踏み切らざるを得なかった根深い問題(=ディスインフレ)を克服できる可能性が高まったことで、市場はECBの政策変更を意識するフェーズへシフトしたと言える。ドラギ発言を受け、独10年債利回りは0.371%と5月25日以来の水準まで急騰し、米独利回り格差が縮小(チャート①参照)。その結果、ユーロドルは上述した1.1300の重要レジスタンスポイントを大陽線で一気に上方ブレイクした。
ECBの政策変更が重要な点は、米金利の上昇圧力を強める要因となり得る点にある。2回の利上げを受けて尚、米10年債利回りは3月のFOMC以降、低下基調を辿っている。この主因は、他国の金融緩和政策の影響により、利回りと流動性の面で米債投資への妙味が皮肉にも増していることにあると筆者は考えている。しかし、ECBが金融緩和政策からの脱却に向け動き出すならば、米金利の上昇を抑えている蓋がひとつ外れることになる。各金融機関によってECBの政策変更が想定される時期はバラバラだが、今秋のドイツ総選挙後に動き出すと筆者は想定している。ECBの政策変更が米金利の上昇要因であるならば、ドル円の上昇要因ともなろう。ただ、これはまだ先の話であり、目先の米金利は米指標データに左右される状況が続こう。
米指標データ以外で注視すべきは、原油先物相場の動向となろう。それを見極める上で米国の週間原油在庫統計を注視したい。在庫減が確認される場合は反発基調を維持しよう。それは「株高 / 米金利上昇」の要因となろう。外為市場では円売り圧力が強まろう。ドル円は今年最高値118.60レベルを起点とし、今日現在112.85レベルで推移しているレジスタンスラインの突破が注目される(チャート②)。逆に在庫増となれば、22日以降、反発基調にある原油先物相場に水を差す展開となろう。原油先物相場の反落は株式市場の調整材料として利用される可能性がある。この場合、米金利にも低下圧力が強まることで、ドル円も調整相場となろう。ただ、通貨オプション市場のリスクリバーサルを確認すると、ドル円が下落するムードはない。下値は111円台でサポートされる展開を想定したい。一方、ユーロドルは急騰後の調整を警戒したい。1.1300がレジスタンスからサポートへ転換するかどうか、この点に注目したい。