Market Analysis
「原油高→米長期金利の上昇」を背景に米ドル相場は底堅さを維持している。その点を示唆しているのが、1.19突破に失敗したユーロドルである。4月中旬以降、ユーロドルと米独利回り格差間で従来の相関関係(格差拡大=ユーロドル下落 / 格差縮小=ユーロドル上昇)が回復していることが上値の重さの主因である以上、米金利の上昇が抑制されない限りユーロドルの下落基調は継続しよう。
米金利上昇の抑制要因として注視すべきは、株式の下落である。行き過ぎた原油高と金利の上昇は米経済にとってネガティブ要因だが、米株のボラティリティを見る限りリスク回避の震源地となる可能性は現時点で低い。目下のところリスク回避の震源地となり得るのが新興国株式だろう。MSCI-EMERGINGは年初来安値を更新中。4月以降は、主要な新興国通貨も対ドルで下落基調となっている。現状、新興国ETFのボラティリティ(CBOE-EMERGING MARKETS ETF)は低位で安定しているが「原油高→米金利の上昇→米ドル高」が続けば新興国市場からの資本流出懸念が意識され、今年2月上旬や3月下旬のようにボラティリティが拡大する(=新興国株式の売り圧力が高まる)可能性があろう。
本日は4月の米CPIに市場の注目が集まろう。市場予想を上回る場合は株式の反応、特に米株と新興国市場の動向を注視したい。株高維持ならばドル円は110円台の攻防へシフトしよう。この場合、次のターゲットは昨年11/6高値114.72を起点としたレジスタンスラインとなろう。一方、米金利の上昇が株式の下落圧力を強める場合は、短期サポートラインのトライを想定したい。米CPI以外で注視すべきは、英中銀(BoE)イベントとなろう。OISから算出した直近の利上げ確率は13.7%。今回は利上げを見送るだろう。よって、焦点はファンダメンタルズに関するBoEの見通しとなる。その点を見極める上でカーニー総裁の会見に注目したい。また、直近のインフレ鈍化が利上げ確率の低下につながったことから、四半期インフレ報告での物価見通しもポンド相場の変動要因となろう。
【チャート①:新興国株式 / 新興国ETFボラティリティ】